ウェザープランニング

気象予報士そらんべの独り言 過去ログ

2014/3/28
 昨夕から県内に霧が発生した。気象台では「霧」だといい、県環境管理課によると注意喚起の指針値未満ながらPM2.5が増加しているという。発表内容に食い違いがあるようだが、実はそうではない。
 霧や雲(霧と雲は地面についているか浮いているかの違いでしかない)が発生するためには「凝結核」が必要だ。凝結核は大気中に浮遊する様々な微粒子で、その大きさも概ね0.005μmから1μmを超えるものまで様々である。PM2.5は概ね2.5μm以下の微粒子で、当然凝結核になりうる。
 昨年末の中国各地での濃霧は、このPM2.5の増加が原因であろうし、1952年12月に発生した霧の街ロンドンの濃霧も、おそらくPM2.5を含む大気汚染物質の影響だろう。かくのごとく、微粒子と霧は切っても切れない関係にある。言い換えれば、大気汚染という人間のエゴが、天気まで変えてしまうということである。
 ロンドンの濃霧では4千人も亡くなっている。イギリスではその後清浄空気法が制定されたというが、気象現象に国境はない。国境を越えた公害対策が必要であろう。

2014/2/18
 だいぶこのコーナーをサボってしまった。
 ここのところ、南岸低気圧による太平洋側の大雪が続いている。南岸低気圧自体は年がら年中あるが、真冬に、本州に近いコースや上陸するコースをとることは珍しい。
 低気圧による降雪の怖さは、冬型の気圧配置の特徴である筋状の雲と違って連続した雲が広がるため、降雪の範囲が広く隙間がなく、連続的に降り続いて大雪になりやすいことである。これは南岸低気圧に限ったことではない。1日に30cmも積もれば、雪に慣れた地域であっても交通傷害などの影響が出る。普段降雪が少なく、備えや慣れのない地域での苦労は想像に難くない。人命も奪われている。
 ここ数年、想定外の災害が続いている。災害時の全国的な協力体制を見直してもよいのではないだろうか。

2013/11/25
 矢島の鳥海グリーンラインの道路復旧工事現場で痛ましい土砂災害が起こった。お亡くなりになられた方のご冥福と、行方不明になっている方々の一刻も早い発見をお祈りしたい。
 この事故は、工事の安全対策が当然問題にされるだろうが、根本原因は別にあるような気がする。雨水や地下水で盛土が緩んだことが原因とみられる道路の亀裂が見つかり、工事自体がその復旧工事であること、豪雨による土砂災害が度々起きている路線であることなどをみると、そもそも路線が地形、地層、地質、地下水脈等の関係で雨に弱い位置に設置されているもとの思われる。修復前のアスファルトのヒビを見ても尋常ではないものがあった。当初路線の選定や工法にも問題があったのではないかと思えてならない。
 道路設計に当たっては、当然地質調査、安定計算などが実施されているだろうが、それは果たして十分されていたのだろうか。その分析は正しかったのだろうか。また、適切な設計だったのだろうか。そもそも路面にヒビが入らなければ、今回の復旧工事は必要なかったはずなのだ。
 土砂災害が多い路線だということからみて、当初設計に何か問題があったように思えてならない。

2013/10/20
 気象に関する世間の誤解は数多あるが、「台風の温帯低気圧化」=「台風が弱まった」もその一つであろう。
 台風第26号が、16日午後3時に根室の南海上で温帯低気圧に変わったが、中心気圧は968hPa、中心付近の最大風速は35メートルで、温帯低気圧に変わる前の状態に比べていささかも弱まっていないし、もし台風のままなら「大型で強い台風」と呼ばれる勢力を保っていた。それどころか、その後強風の範囲は広がった。
 では、なぜ「温帯低気圧」に変わったのか。低気圧には「熱帯低気圧」と「温帯低気圧」がある。これは強さの違いではなく、“性質”の違いによる。そして、「台風」は「熱帯低気圧」の一種であり、熱帯低気圧のうち中心付近の最大風速が17メートル以上のものをいう。つまり、「台風」が弱まったら、「温帯低気圧」ではなく「熱帯低気圧」と呼ばれることになるのだ。
 「台風」が「温帯低気圧」に変わるというのは、低気圧としての“性質”が変わったことを意味しており、“弱まった”という意味は全く持たない。多くの台風が温帯低気圧に変わるときは弱まっていることが多いため、このような誤解が広がってしまったのだろう。台風が温帯低気圧に変わったからといって安心してしまうのは早計だ。

2013/8/10
 これまでに経験のしたことのないような大雨で、人命の失われる災害が起きた。お亡くなりになられた方のご冥福と、行方不明になっている方々の一刻も早い生きての発見をお祈りしたい。
 さて、大雨の原因を分析してみた。昨日は非常に湿った空気が、南からではなく西から次々と流れ込んだ。下層は南西風で、暖湿な空気は白神山系などにぶつかり、暖気移流と相まって強い上昇流となって積乱雲を発達させた。朝にはウインドシア(風の収束)もあり、更に上昇流を強めた。これが中層の西風に流された。衛星画像では典型的な雲クラスターが表れている。
 はじめは南北に縦長だった収束線は9時頃には横長の東西方向になり、明瞭なバックビルディング(移動した積乱雲の跡に新たな積乱雲が発生し、次々と同じ場所に流れ込む)構造に変化したことが、レーダーエコーの変化から読み取れる。
 前日の予報資料では、当初大した雨は予想されていなかったが、新しい資料になるにつれ、予想降水量はどんどん増えた。しかし、ここまでの豪雨は予想しきれていなかった。バックビルディング自体は非常に狭い場所で起こる現象で、現在の粗いメッシュの数値予報では予想が困難である。せめて前日から警報クラスの雨量が予想されていれば、と非常に残念な思いである。

2013/8/9
 県北で大変な雨が降っている。既に災害が発生しており、気象台からは、「これまでに経験のしたことのないような大雨」との表現で、厳重な警戒が喚起されている。
 今朝は、状況の変化に伴い、頻繁に各種の気象情報が更新されている。是非、下記の「秋田県防災気象情報」のウェブページを利用していただきたい。トップページで最新情報発表の日時が確認でき、クリックで詳細情報が確認できる。
 http://www.akita-bousai.jp/weather/
 過去の経験に基づいた「自分のところは大丈夫」といった考えは通用しない。周囲の状況や最新の情報に留意し、避難に躊躇しないでいただきたい。また、豪雨の中や、くるぶしより高い冠水域の非難は危険であるので、このことにも留意していただきたい。

2013/8/4
 6月とは打って変わり、真逆で、何とも雨の多い7月だった。県内のアメダス観測所でも、その多くが7月として月降水量の多さの記録を更新した。
 7月に入ってもブロッキング現象が続いている。6月とは高気圧の張り出し位置がずれ、下層に暖湿気流、上空には寒気の入りやすい状態が続いた。
 オホーツク海高気圧は、実はブロッキングによって発生・発達する。これが強いため、梅雨前線が北上できず、東北地方の梅雨明けが遅れた。
 今年は太平洋高気圧も強く、西日本、東日本では猛暑となっている。そして寒気によるオホーツク海高気圧も強い。暖気も寒気も強いことが実はブロッキングの原因である。偏西風の南北の蛇行は、この寒暖の空気を混ぜて、温度差を小さくしようという自然界の調節機能なのである。

2013/7/3
 何とも雨の少ない6月だった。県内のアメダス観測所でも、その多くが6月として月降水量の少なさの記録を更新した。
 梅雨入りの遅さと梅雨入り後の雨の少なさが原因の一つとして言われているが、それだけでは説明が不十分で、梅雨入り前の雨の少なさまで説明しなければ、記録の1位となったことは説明できない。
 ここのところブロッキング現象が続いている。ブロッキングとは、偏西風が大きく南北に蛇行することによって起きる。通常なら、偏西風に乗って天気は西から東へと順調に周期的に変化するが、蛇行が大きくなると東西の動きが極端に遅くなる。したがって天気の変化が遅くなり、同じ天気が続くようになる。
 今年の6月は、梅雨入り前も後ブロッキングが続いており、高気圧が張り出しっぱなしだ。やっと今日あたりから状況が一変しそうではあるが・・・。

2013/5/27
 20日、オクラホマで巨大竜巻が発生した。あまりの大きさに愕然とした。幅が2kmだという。
 気象現象としての渦は、低気圧や台風のように直径が数100kmから1000kmを超えるものから、塵旋風など数10cmのもの、もっと小さい乱渦など様々ある。いろいろな大きさの渦があるのだから、直径2kmの渦があっても不思議ではないともいえるが、滅多に起こる現象ではない。
 これだけの災害があると、どうしても予報に話題が及ぶ。どんな現象も、全く予報できないわけではないが、現象が小さいほど、激しいほど、場所や日時、強さを予報するのは難しくなる。せいぜい「○○範囲で可能性がある」という程度だ。
 竜巻の発生メカニズムについては、台風ほどにはその発生メカニズムがはっきりとはわかっていないし、そのスケールの現象を観測する観測網も不十分に過ぎて予報にはなかなかつながらない。もっとメカニズムが詳細に解明できれば、多少は予報精度も上がるかもしれないし、災害も減らせるかもしれない。それに期待したい。

2013/4/22
 今日、秋田地方気象台からウメの開花が発表された。平年より13日、昨年より1日遅い開花である。
 「えっ、桜じゃなくて梅?」って思った人いませんか。実は、気象台では桜だけでなく、いろいろな動植物の観測をしているんです。「生物季節観測」といいます。
 つばき、たんぽぽ、すすき等の開花、いちょうの発芽、いろはかえでの紅葉・落葉、うぐいすやひばり等の初鳴、もんしろちょう、とのさまがえる、しおからとんぼの初見などです。気象台の敷地内に標本木のある植物もありますが、概ね気象台から5kmくらいの範囲内で観測します。
 気象台は、天気や気温等の観測も行っています。これらの観測成果や、天気予報・注意報などを公表することを「発表」といいます。というわけで、ソメイヨシノの開花を観測したらそれを「発表」します。決して「宣言」ではありません。

2013/3/30
 最近、「“そらんべ”って何」ってよく聞かれる。
 “そら”は“空”そのまま。“んべ”は“あんべ”。“そら”+“あんべ”で“そらあんべ”。母音の“あ”が続くところが縮まって“そらんべ”。
 んっ?“あんべ”って何かって?。それは秋田びじょんのキャッチフレーズ“あんへいいな”の“あんべ”と同じ“塩梅(按配)”の秋田弁。
 というわけで、“そらんべ”は“空の塩梅”、空の具合っていう意味をもじった芸名?です。

2013/2/18
 PM2.5が、日本にもやってこないかと心配されている。
 テレビでは上空のジェット気流の図を出して、「偏西風に乗ってどうのこうの」と説明される場面が見られるが、実はこの時期、PM2.5は上空の偏西風には乗りにくい。今は冬で、冬型の気圧配置となることが圧倒的に多い。大陸はシベリア高気圧に覆われる。高気圧は“沈降性逆転層”を生じ、その下の層の空気に蓋をする。ことため、地表の汚染物質はあまり拡散せず、上空にも行けず、地表付近に留まって被害を生んでいる。
 心配しなければならないのは春先だ。簡単に言えば、黄砂が飛んでくる季節はPM2.5も飛んできやすいということ。だから黄砂予報がある程度参考になる。ただし、発生の起源となる場所が違うので、100%の代用にはならない。
 PM2.5が、今のように発現地に停滞しているうちは日本であまり心配しなくてよい。逆に、発現地で拡散が強まり、現地の濃度が薄まった時の方が心配である。

2013/2/12
 コンピュータの遠隔操作により、複数の誤認逮捕を生んだ犯人が逮捕された。
 しかし、この逮捕のされ方、いや、し方はどうだ。犯罪の根本である遠隔操作の証拠から犯人を特定したのではなく、犯人が与えた、犯罪とは直接関係のないヒントから辿っての逮捕だ。日本が、サーバー犯罪に対していかに対応能力が低いかを証明してしまった。
 今やネット社会を無視して社会も経済も文化も、日々の生活も語れない。そして厄介なのは、国内の問題では片付かないということだ。
 ネット犯罪、サイバーテロはどんどん増える一方だろう。新しい仕組みやルール作り、国際協調などを考える必要があるだろう。それをなくしてネット選挙を行うなどは、大きな問題をはらんでいるように思う。

2013/1/22
 桜宮高校の体罰問題に対し、一線を越えたとし、橋下市長が募集中止や、教員の総入れ替えを主張している。
 命が失われた事実があり、確かに一線は越えているだろう。しかし、だからといって何をしてもいいわけではないだろう。腐った木が見つかったからと言って、森の木を全部切ってしまっては、森に棲む生き物が全滅してしまう。
 学校は、教師が教育を行う場ではなく、生徒が教育を受ける場だ。主役は生徒である。その生徒や、入試が迫っている志願者などに多大な負の影響を与える方法がいい方法であるはずがない。橋下氏の主張が実行されれば、人生設計が大幅に狂ってしまう子供たちも多いだろう。
 私は教師時代、不本意入学(志望していたのと違う高校に入学)の結果、不登校になったり中退した生徒を何人も見ている。体罰問題に大鉈を振るう必要は当然あるが、本質を見誤り、振い方を間違えてはいけない。体罰問題は、9割以上教師個人の資質の問題であり、生徒には何の責任もないのだ。

2012/12/29
 もはや旧聞といってもいいかもしれないが、選挙結果が出た。自民党の圧勝である。
 議席数からいえば圧勝だが、得票数は大敗した前回より少ないそうだ。これは問題。民意が反映されていない。小選挙区制の悪いところが出た。
 政権交代可能な選挙制度であることがメリットだという。メリットはいい。しかし、選挙のたびに、どこかの党が議席の過半数どころか2/3に迫るような、あるいは連立で簡単に2/3を超えるような議席数を、民意に反して得られるというのはどうだろう。
 小選挙区制はメリットよりデメリットの方が多過ぎる。議員数の大幅削減と合わせて、根本的な選挙制度改革をして欲しい。

2012/11/26
 嫌いな選挙“期間”が近づいてきた。小党乱立離合集散で、マスメディアは「わかりにくい」と騒いでいる。疑問。
 今回は争点が多い。消費税、原発、エネルギー政策、TPP。憲法や世襲制を争点にしようという政党もある。仮に5つの争点があって、イエス・ノーだけで選択できる単純な争点だとしても、その組み合わせは32通りにものぼる。それを2つ3つの数少ない政治集団に集約しようなんて土台無理な話だ。人の考えは十人十色。選択肢が多いのはわかりやすくありがたい。
 しかし、権力欲しさの離合集散はどうだ。数合わせのために主張を曲げる政治家や政党など信ずるに足りない。私は、信用できそうな政党や政治家の中から、最も自分の考えに近い公約を掲げる党や候補に投票しようと思う。ただ、小選挙区制では、小党乱立のいいところが生かされない(民意に相応した選挙結果が得られない)のが問題ではある。
 候補の考えが聞きたい。名前を連呼するだけの選挙騒音は御免被りたい。

2012/10/3
 とにかく暑い9月だった。
 秋田は、月平均気温の高い方の記録を更新した。これまでの記録は平年差+2.0℃だったが、今回は何と+3.8℃と倍近い。統計学的にみると、殆どあり得ないといっていいほど低い確率でしか起きない記録だ。この暑さは、秋田だけでなく東北地方全体に及んだ。月平均気温の高い方の記録は、東北地方で統計を取っている17か所全てで更新された。全体でも+3.5℃とかなり高い。
 原因の殆どは太平洋高気圧の張り出し。太平等高気圧圏内は夏の空気、秋雨前線を境にしてその北側が秋の涼しい空気と考えてよいが、この涼しい空気に覆われた日が少ない。台風も熱い空気を運んできた。
 しかし、これだけ見て「地球温暖化だ」などといってはいけない。西日本では、平年と大差なかったようである。地球温暖化とは、全地球規模の気候変動を、気温の切り口で表現した言葉である。局地的な現象だけでは議論できない。しかし、これほど確率的に低い現象が起きると、「何かおかしい。気候が変動しているのかもしれない。」と思わさるを得ない。

2012/9/12
 垂直離着陸機オスプレイの事故原因が、人的要因であり、機体の欠陥や不具合ではないとして片付けられようとしている。事実もそうなのかも知れない。しかし、「だから安全だ」という論理展開には疑問を感じる。
 仮に、これまでの事故の原因のすべてに人的要因が絡んでいると仮定して、それでも事故が多いのはなぜなのだろうか。それはそれだけ操縦が難しいということだろう。
 機体の構造と離着陸、飛行の仕組みを物理的に考えても、その操縦が難しいであろうことは容易に想像できる。そして、操縦が難しい乗り物は、簡単な乗り物より事故が起きやすいのは当たり前である。乗り物が安全であるかどうかは、「機体に欠陥がなく、操縦にミスがなければ事故が起きない」ということだけでは決まらない。操作性の良さ、操作手順の少なさ、簡単さなど、操縦ミスの起きにくさや、ヒューマンエラーを補う仕組みの有無等も当然影響するだろう。つまり、現段階のオスプレイは、米軍や防衛省の説明に嘘や隠蔽がなかったとしても安全とは言えないように思う。
 しかし、一方、現状の輸送機は老朽化し、新機種への更新が必要なことも事実で、代案の無い反対のための反対もいかがなものかと思う。

2012/8/14
 この間スーパーで買い物をしていたら、乾パンの缶詰を見つけた。乾パンは非常食として家に常備しているのだが、しばらく新しいものに入れ替えていないのを思い出して数缶購入した。
 これまでストックしていた古い乾パンを食べようとして缶を見たらビックリ!。「80601」の表示があった。当時の表示は製造年月日であったはずなので、1980年6月1日製造の意味だろう。同種の乾パンの賞味期限は5年とのことだが、何と30年以上前に製造されたものだ。恐る恐る缶を開けてみたが見た目に異状はない。食べてみると、味も普通だ。乾パンの缶詰恐るべし。
 賞味期限を1日でも超えると、その食品を捨ててしまう人が多い。賞味期限は消費期限と違い、その商品が「美味しく食べられる期間」であり、「それを過ぎるとおいしさは保証できません」というだけであって、決して「傷んで食べられませんよ」という意味ではない。捨てるなんてもったいない。
 世界には、まともに食事をできない人が沢山いる。食べられるものを捨てるなんて私には簡単にできない。消費期限が1週間程度と短いものならともかく、1か月以上ある食品ならば賞味期限が数日過ぎたからといって捨てたりせず食べたいものだ。もちろん、異状がないかはチェックして。

2012/8/10
 このコーナーにしては、今までと毛色の違った個人的趣味の範囲の話から。
 私はボブ・ジェームスというアーチストが好きだ。高校時代、軽音楽同好会の先輩に聴かされてからずっと聴いている。知らない人も多いかもしれないが、映画音楽も手掛け、グラミー賞も受賞している米ジャズ界の大御所だ。昨年開催された「いわてジャズ」に参加し、震災復興を願って作った「プット・アワ・ハーツ・トゥゲザー」という曲を地元オーケストラと共演したりもしている。
 そのボブジェームス率いる一流アーチストのユニットに松田聖子がゲストボーカルとして参加するらしい。「プット・アワ・ハーツ・トゥゲザー」を日本人歌手が歌うという企画が持ち上がり、クインシー・ジョーンズを通じての面識で声がかかったらしい。松田聖子がジャズ・ボーカリストとして世界デビュー・・・。普通では考えられない組み合わせだが、ちょっと楽しみではある。聖子の歌声が、震災復興の力となることを願いたい。
 秋田市は、東日本大震災で発生した岩手県野田村のがれきを9月4日から受け入れを開始すると発表した。震災からもう1年半も経ってしまっている。少し、いや、かなり遅い気もするが、いろいろな方面で復興が進んで欲しい。できるだけスピーディーに。

2012/7/17
 梅雨前線による災害が起きている。秋田県でも起きたが、九州での災害は想像を絶する。
 以前にも書いたとおり、何でもかんでも「地球温暖化」のせいにはしたくないが、時間降水量が多いためには空気がより多くの水蒸気を含むことができること、すなわち気温が高い必要があり、これまで経験したことのない降水量を説明するためにはやはり「地球温暖化」を持ち出したくなる。これからは「予想外」「想定外」の気象現象が増えることだろう。
 これからは気象以外でもいろいろな想定外が起こるだろう。震災以来、「想定外」は責任逃れのために使われているが、私には、想定する能力がなかった(あるいはあえてしなかった)と自分の責任を認めているようにしか見えない。
 いじめによる自殺事件でも、「いじめがあったとは認識していなかった」と責任を逃れるための発言があるようだが、これも「いじめを発見する能力(あるいは事実を認める誠実さ)に欠けていました」と自らの責任を認めているようにしか見えない。何事も、想定していなかったことに対応できる能力こそが大事なのではないだろうか。

2012/6/7
 1か月ほど前、書こうと思っていて竜巻騒ぎで後回しにしたネタがあった。
 とあるテレビ番組で風力発電の話題が取り上げられ、地図上で全国の風の強いところが図示されていた。秋田県の部分を見ると、「秋田」と「能代」が表示されていた。もし、このマップの基になっているデータが、そのまま風力発電適地の選択に使われているとしたらまずいと思った。
 アメダスの観測データを見ると、秋田県内では確かに「秋田」と「能代」の風が平均的に強い。しかし、これには観測者側の事情による理由がある。県内アメダスの風向風速計の高さは殆どが6.5mである。「鷹巣」と「横手」は歴史的背景もあって10〜11mである。これに対し、「能代」は19m、「秋田」に至っては39.9mである。高さが高ければ高いほど、地物の影響が小さくなるため風速が大きくなることは誰しもがわかることであろう。
 長く秋田に暮らしているが、「秋田」や「能代」の風が他の県内地域に比べて強いと思ったことはないし、地形的理由もあまり見当たらない。やはり、「秋田」「能代」の風速の観測値が大きいのは、実際に風が強いからではなく、風速計の設置環境の違いによるものと考えざるを得ない。
 気象データに限らず、統計資料を見るときには注意が必要である。統計の範囲や期間、その他の条件をしっかり確認することなく、結果の数字だけを見ていては判断を誤ることになる。世間には、まやかしや、誤解された統計が溢れている。

2012/5/21
 今朝、全国で日食が起こった。関東、東海、近畿、四国、九州などの一部の晴れた地域では金環日食が見られたはずだ。星仲間も関東に遠征して、無事見られたようだ。私は会社の建物の窓から、天体望遠鏡に取り付けた太陽投影板で部分日食を観察した。
 秋田は快晴で、全く雲に邪魔されることなく日食が見られた。最大食分は7時42分頃で0.892、すなわち、直径比率で9割近くが欠けた。(とある新聞に「面積」とあったが、「直径」の誤りである。)
 25年前に沖縄に金環日食を見に行ったときは、丁度仙台管区気象台に勤務しており、沖縄気象台の直達日射のデータを取り寄せて、その変化と欠けた面積の関係を調べたこともあった。当時は観測項目の関係もあってそのときは気が付かなかったが、太陽が大きく欠けたことが日照時間にも影響を与えた。
 秋田の7〜8時の日照時間は38分と記録されている。全く雲がかからなかったのだから本来60分であるべきなのだが、最大食分の前後22分は、日照時間として認められる最低限の日射の強さに達しなかったことになる。当然、気温にも影響したことだろう。

2012/5/8
 ここのところ、何かと事故や災害の報道が目につく。関東の、特につくばでの竜巻被害の大きさが明らかになってきた。3年前に能代で起きた竜巻被害をこの目で見てきたが、テレビ映像を見ただけでもそれをはるかに超える大きな被害が出ていることがわかる。
 日本でこれほどの規模の竜巻の記録は、これまでなかったのではないだろうか。驚くのは被害の大きさだけでなく、その範囲の広さである。幅も広いし、距離が15kmにも及ぶというのは驚きだ。このような竜巻が日本で起こったことは大変な驚きだ。
 残念ながら、現時点で竜巻を正確に予想する術はない。可能性が予想できるだけだ。直前の兆候ならある程度掴めるが、市民への伝達が難しい。やはり市民一人一人が竜巻を起こす積乱雲について、その見分け方を身につけて、自己防衛するのが現時点では最も有効な対策だろう。
 今回の竜巻は、展開が進んでいるドップラーレーダーや、空気の動きの立体構造がわかるウインドプロファイラ観測の成果を基に研究されるだろうが、これにより予報技術が高まることと、市民の啓蒙とを両輪にして、日本の防災、減災の能力が高まることを期待したい。

2012/4/4
 列島の広範囲に暴風による被害をもたらしている低気圧。こんな低気圧は記憶にない。といっても、風の強さではなく、発達の速さだ。
 この低気圧の中心気圧は、2日21時には1006hPa(ヘクトパスカル)であったが、3日21時には964hPaにまで発達した。24時間で42hPaも下がった。このように急激に発達する低気圧を、俗に「爆弾低気圧」という。こういうときには否応なく等圧線の間隔が混み、暴風が発生する。今回の発達は、遅くとも2日の朝にははっきりと予想されていた。事前に注意を喚起したり、備えたりする時間は十二分にあったが、果たしてその時間は生かされただろうか。
 一般に、台風は怖がられ、低気圧はそれほどでもないが、今回の暴風が証明しているように、その考えは間違いだ。発達した熱帯低気圧である「台風」と一般に単に「低気圧」と呼ばれる温帯低気圧は、構造の違いによって名前が違うだけで、強さには関係ない。台風より、“発達した低気圧”の方が影響範囲が広いことを知っておくべきである。
 影響範囲の広さゆえ、北日本ではまだ警戒が必要であるが、低気圧の発達の最盛期は過ぎているようだ。秋田でも、風のピークは過ぎている。

2012/3/27
 秋田県でも、いよいよ今シーズンのスギ花粉の飛散が始まったようだ。例年に比べてかなり遅い。
 3月は、上旬に少し暖かい日が続いたものの、ここのところ気温の低い日が続き、まだ雪も降っている。春はなかなか来ないという陽気だったが、来るものがやっと来たようだ。花粉症の方々には気の毒な季節ではあるが。
 秋田県で、やっと震災瓦礫の試験焼却が始まった。受け入れ反対論者がいかに罪深い主張をしていたかが証明されることになるだろう。
 春が来る前に、花粉症のような苦しい季節もあるかも知れない。しかし、多少遅れても春は必ずやってくる。被災者の皆さんに、東北に、日本に、一日も早く本当の春が来ることを望む。そして、それを無駄に遅らせてはならない。

2012/3/12
 あの大地震、大津波から1年が経った。(災害はまだ続いており、「震災から1年」という表現には多少の違和感を感じる。)しかし、復旧、復興は遅々として進まない。第一歩の瓦礫処理すらまだ数パーセントに過ぎない。
 昨日は各局で震災に関連する番組が放送された。いろいろ知るにつけ、なぜ、と思うようなことがあまりにも多い。復興の速度が上がらない理由はいろいろあるようだ。自治体から国への申請書類の多さ、必ずしも現地の実態に合わないメニュー、細かな条件、地権者等個人の財産権の確認の必要、平等性の確保等である。
 最も気になるのは、この異常事態下での通常ルールの適用である。法律や規定類は、国民の命や財産を守る目的で存在するはずだ。スピードが遅いことは、人口流出や雇用創出の遅れなど、街や被災者の財産を奪うという側面があるのに、杓子定規な通常ルールの適用が足枷となっている。スピードによって得られる利得を考えれば、例えば、目先の多少の不公平には目をつぶっても、全体には大きくプラスになるのではないか。不公平は後で調整すればいい。
 ルールを破ってもいいとは言わないが、ルールがマイナスに働いているのならルールを変えればいい。特例の適用があってもいい。ルールの下に国民があるのではなく、国民のためにルールがあるのだ。政治家や役人は、現行ルールの中で何かやろうとするのではなく、必要なことをできるだけ早くやるための新しい法律やルールを作るといった英断をして欲しい。多少はやっているのだろうが全く不十分だと感じる。

2012/3/7
 国が震災瓦礫の受け入れ自治体に対する追加支援策を発表した。支援は無いよりある方がいいに決まっているが、ピントが外れている。
 震災瓦礫の受け入れが進まないのは、費用の問題ではなく、放射能に対する住民の不安だ。この不安を取り除くことこそが受け入れの拡大につながる。しかし、信用できる、誰もが納得して安心できる情報の発信が少な過ぎる。
 申し訳ない言い方だが、被爆国であるが故の日本人のややヒステリックな核アレルギーや、科学的見地による危険度の検討を行うことなしに、ただただ怖がっている一部の方々が瓦礫の受け入れを遅らせている最大の原因であり、こちらの方々への対応が最も急がれると思うのだが、その面での支援こそが本当に必要な自治体への支援ではなかろうか。
 また、全ての住民が賛成する政策などあり得ないのだから、自治体側もビクビクしているだけでなく、自治体として安全が確認できたなら、強い指導力と推進力で復興に向けて前進して欲しい。被災地の復興は、被災地だけでなく、国全体の振興につながるはずだ。

2011/12/9
 震災瓦礫の受け入れ反対者が、県に質問状を出したとの記事を見かけた。私には、とても残念な内容に感じられた。
 「動かさないのが賢明」というが、では動かさないでどう処理し、復興を進めろというのだろう。代案は持っているのだろうか。「公共工事に投資が集中し、困っている人に支援が回らなくなるのではないか。」というが、支援のために公共工事が必要なのではないのか。「受け入れのメリットは何か」というが、人助けをメリットのあるなしでするかしないか決めるのか。「焼却による放射性物質の拡散の危険性をどう考えるか」というが、被災地では自然拡散や地下水浸透しても構わないとでもいうのだろうか。放射性物質ではないが、自然発火や、腐敗等による付近の環境の悪化が被災地では進んでも構わないというのだろうか。
 殆どの質問事項が、自分や自分たちの地域中心の視点からのもので、被災者の立場に立っていない。自分が瓦礫の近くに住んでいたら、同じような意見をどう思うのだろうか。
 困っている人がいたら助けてあげる、そのときの視点が自分の損得から発することに疑問を感じる。どんな人助けでも、多くの場合は時間なり、金なり、危険なり、自分にとっての多少のマイナスがあるのは当たり前であろう。その多少のマイナスより、助けられた側のメリットが多大であるなら、助けてあげるのが人情だろう。まず、自分の損得より、助けたあげた時の相手のメリット、助けてあげない場合の相手のデメリットから先に考えることはできないだろうか。瓦礫のそばにも人が住んでいることを忘れてはならないし、それが自分だったらという視点を持たなければならないと思う。

2011/11/4
 東京で震災瓦礫の処理作業が始まったが、他の自治体では受け入れるところがほとんどなく、処理が遅々として進まない。中には、できるだけ現地で処理しろと、実行不可能なことをいう人もいる。残念で悲しいことだ。
 瓦礫は、化学反応で自然発火したり、有毒ガスを発生させたり、病原菌等の温床にもなる。そもそも存在自体が復興の邪魔だし、被災者にとっては震災を思い出させるいやな存在でもある。量からいっても、特に周辺自治体が手を貸して、一刻も早く処理しなければならない。
 受け入れが進まない理由は主に放射能汚染への恐れのようだ。しかし、正しく恐れなければ、被災者に追い打ちをかけることになる。放射線で注意しなければならないのは、発生源での“強さ”ではなく、被曝(放射線を受ける)する“強さ×時間”である。遮蔽や、距離を取ることによって強さを弱め、影響範囲にいる時間を短くすればどうということはない。
 拡散は心配だが、処理装置に工夫すれば避けられる。そもそも放射性物質の処理は、1か所、または数か所に集めて、遮蔽・隔離する以外にない。集めるためには体積を小さくする必要があるが、体積を小さくすれば当然に濃くなる。したがって、焼却灰の放射能が強くなるのは当たり前のことで、強いほど効率的に放射性物質を集めたことにもなるのだ。あとは、作業員や周辺住民が被曝しないための仕組みさえ作ればよいのだし、そのことから逃げたり避けたりすべきではない。被災者たちのことを想えば、悲しみや金銭・物資だけでなく、多少の危険も分かち合うしかない。もちろん、復興への期待や希望も。

2011/9/23
 台風第12号に続き、台風第15号が日本列島を襲った。「天災は忘れたころにやってくる」というが、忘れる間もなく、次から次とやってきている。
 台風第15号は、第12号のようにノロノロではなかったが、中心付近の風は非常に強く、多くの交通障害を招いた。止まっているトラックを倒したのにも驚いた。また、よくあるパターンではあるが、接近前から秋雨前線に湿った空気を送り込んで雨を降らせ、更に本体が雨を降らせて土砂災害を引き起こしもした。津波の被災地も直撃した。
 自然の力に対して人間は無力だとつくづく思い知らされる。立ち向かっても敵わないし、恵みを受けなければ生きてもいけない。人間中心、経済・産業優先で、猛スピードで行ってきた自然破壊を反省し、自然との共生、いや、自然の中で生きていくにはどうしたらよいのかという視点を、もっと大切にすべきではないだろうか。

2011/9/14
 台風第12号の爪痕が酷い。一般に、台風は南の海上にあるうちの移動速度は遅いが、北緯30度(九州の少し南)を超えたあたりからはスピードアップする。しかし、台風第12号はなかなかスピードアップしなかった。
 移動速度の遅い台風はなかなか直線的な動きをしないため進路予想が難しいのだが、今回はは、そんなことより影響する時間が長くなったことが問題だった。実際、長時間の強い降水によって考えられないような総雨量を記録し、土砂災害を引き起こした。土砂崩れや土石流は、津波に比べて影響範囲は狭いかもしれないが、土砂を巻き込んで重くなることと、斜面を下るときの加速により局地的な破壊力は、おそらく(同じ鉛直スケールの)津波より桁違いに大きい。
 津波もそうだが、今回のような災害を引き起こす現象の発生は抑えようがない。とすれば、起こることを前提に対策を講じる必要がある。防潮堤や砂防ダムなどで防ぎきれないならば、防ぐハード面の対策は必要最小限に留め、災害発生後に必要な避難場所や非常用物資等の事後のハード面の充実や、迅速な復旧復興のためのノウハウの蓄積、防災教育や避難訓練などのソフト面を強化することが、今までは足りなかったし、これからは必要なのではないだろうか。

2011/8/5
 業務用のサーバコンピュータがたて続けに2台故障した。1台分しか代替機を用意しておらず、仕事がばたついているうちに、このコーナーを更新しないまま2か月近く経ってしまった。
 その間に、気象の世界だけでもいろいろなことが起こっている。2週間以上早い梅雨明け、見たことのない変わった進路の台風第6号とその被害、とんでもない降水量で大災害を引き起こした新潟・福島豪雨。常識の通用しないことが次々と起きている。
 災害に対しては、慣れや常識は誤った判断の原因になってしまうと改めて感じた。常識外のことが起こるから災害となる。今までそんなことは起きたことがないから大丈夫、といった考え方が最も危ない。
 コンピュータが2台同時に故障することなどまずないと思っていたが、考えを改めなくてはなるまい。

2011/6/17
 一昨日、全県一斉節電の実験が行われ、一応目標の15%を達成したようだ。もっとも、当日の気温等を考えると安心できる数字ではないようだ。
 一昨日、弊社で何か特別な節電をしたかというと何もしていない。普段どおりである。何故なら、弊社では普段(震災前)から来客時以外の室内消灯など節電に心がけており、これ以上できる節電方法が殆どないからだ。
 実を言えば、1日くらいなら止めても差し支えないコンピュータが1台あるし、計画停電に備えて用意した発電機を稼動すれば更なる節電が出来ないわけではなかった。しかし、継続的にできる節電でなければ長期にわたる夏場の節電の参考にはならないのでそこまでは敢えてしなかった。
 早い時期から節電に心がけている企業や個人も居れば、これまで節電には頓着無かった人もいるだろう。「前年比一律○○%」とか言われてもちょっと困る。それぞれが、それぞれの状況に応じて出来ることをやるしかないだろう。

2011/5/18
 今日、10年ぶりに、気温等気象観測値の平年値が更新された。昨日までは1971〜2000年の30年間の平均値が平年値として使われていたが、今日からは1981〜2010年の30年間の平均値が平年値ととなる。
 秋田の気温を見ると、新平年値は旧平年値より、年平均で0.3度上昇している。あなたはこの数値を大きいと見るだろうか、小さいと見るだろうか。期間を見ると、1980〜2000年は共通していて、1971〜1980年のデータが2001〜2010年のデータに置き換わったことになる。これにより0.3度上昇したのだが、これは単純な差ではない。なぜならば、共通期間が20年あるため、平均の計算で差が1/3に薄められているからだ。1971〜1980年の10年間と、2001〜2010年の10年間の平均の差を単純に計算すれば、3倍の0.9度になるはずで、30年で気温が1℃近く上がったことになる。
 去年の夏は猛暑だったが、6〜8月の秋田の気温の平年差は+2.1度であった。これに比べて、10年平均してもなお+0.9度というのは、やはりかなり大きいと言わざるを得ないだろう。
 津波で多くの発電所が被災し、節電が叫ばれている。震災前も省エネは言われていたがあまり進まなかった。今一度、地球温暖化対策の意味でも省エネに努めたい。
 今回の本題から逸れるが、原発はあまりCO2は出さないものの核廃棄物というとんでもなく厄介なゴミを出す。今回証明された事故の危険性も考え合わせれば、決してクリーンエネルギーとは言えず、私にはあまり賛成できない。

2011/4/30
 秋田でもサクラが満開となり、沖縄、奄美では梅雨入りが発表された。季節は確実に進んでいる。しかし復旧・復興はどうだろう。それ以前に被災者対策は進んでいるだろうか。
 大地震から50日も経つというのに、未だ十分な食事が取れない方々が居るらしい。片や、ボランティアの受け入れを断らなければならない被災地もあるという。これは明らかに情報を統括し指示する仕組みがうまく働いていないということだろう。
 放射線安全学の専門家である内閣官房参与方が辞任した。世論調査でも首相がリーダーシップを発揮していないとの回答が76%、政府の被災地支援について評価しないという回答が52.3%に達したそうだ。しかし菅総理は「国民から一定の評価を頂いている」と思っているらしい。根拠はどこにあるのだろう。この意識の、現実との乖離にはあきれる。
 いや、意識などはどうでもいい。自信を持って行動してもらうことも必要だから。しかし、対策が十分に進んでいないという現実は認めていただき、被災者にはもちろん、国民の多くに評価される対策を早急に講じて欲しいと思う。もちろんこれは総理一人の責任ではなく、政府全体の責任だ。

2011/4/9
 地震以来、妙な自粛ムードが漂っている。「花見をしている状況じゃない」という知事まで出てくる始末。何のための自粛なのだろう。
 テレビで花見をする若者のグループを見た。電気は使わずランタンを持参。会費を集めて被災地産のお酒を買い、余った会費は募金に回すという。何と素晴らしい発想だろうか。花見をしながら被災者の方々にも想いを寄せ、具体的な貢献もしている。これも連帯感のひとつではないのか。
 電気の消費を節約しなくてはならない。しかし、供給力の中に納まっていればよいのであり、西日本で節約する必要はないし、冷暖房の使用が少ない時期や夜間など余裕のあるときは、習慣づけの意味を別にすればそれほど節約する必要はない。東京電力の地域では、使って電気代を払った方が補償に回してもらえるという側面もある。
 復興にはお金と時間が必要だ。寄付金も沢山集まっているが、結局は税金が投入される。税収は経済活動が活発なほど増える。結局は活発な経済活動が復興を支えるのだ。痛みを分かち合うため何を自粛する(例えば買占め)のか、復興のため何を自粛すべきではない(例えば普通の経済活動)のか、ただムードに流されるのではなく、その意味を考えてどう行動すべきか意思決定をしたいものだ。

2011/3/30
 以前から不思議に思っていることがある。主に考古学でのことだが、発見された最も古いものが歴史上最も古いとされてしまうことだ。確かに発見された中では最も古いかもしれないが、発見された時代より古い時代にもあっただろう、あったかもしれないといった表現を聞いたことがない。化石として発見される確率を考えた場合、その時代での存在数もさることながら、その時代を前後して相当期間存在したであろうことは容易に想像できる。
 津波の痕跡調査でも同様である。見つかっている最大の波高より高い津波は起こらないといった考え方が何故できるのか不思議でならない。河川工事などの土木設計では、確率雨量といって、統計処理により過去に観測された最大の降水量より多い降水量でも、50年なり100年なりに1回は起こりうる降水量というものを求め、それを基準に安全設計をする。
 津波の痕跡は数が少ないので統計処理は無理だろうが、だからこそ過去最大より大きいものが起こっても何の不思議もないという考えに立って対策を立てるべきだろう。コストとの兼ね合いも問題にはなるだろうが、「命は地球よりも重いと」いうなら、コスト優先の防災設計はありえない。「想定外」は想定ができなかったのではなく、しなかった、甘かったということに他ならないだろう。

2011/3/22
 東北関東大地震から10日以上経つ。災害時は、3日は自分の責任で凌ぐ、そうすれば救助が来る、ということが一般的にいわれていた。しかし、今回は10日経っても救助の手が届かないところがある。
 普段の備えが大事なのは当然だが、ここまでとなるとさすがに個人で備えるのは難しいだろう。しかし、5日程度の備えはしておくに越したことはなさそうだ。あとは行政側が災害対策の考え方を修正し、備えも見直すべきだろう。
 備えは何も食料や非常用具だけではない。知識も大きな備えだ。放射線漏れや放射能汚染に対する反応はあまりに過剰すぎる。正しい知識のなさがデマを信じ、風評被害などを助長する。必要な情報を出し切れない国、刺激的な表現(見出しなど)で誤解の発生源を作っているマスコミにも責任はあるが、情報の受け手が知識に乏しいことが誤解を生んでいる。最後に自分を守るのは自分自身である。正しい知識は自分を守り、ひいては他人を守ることにもなる。

2011/3/13
 この度の地震、津波の犠牲になられた方々に心より哀悼の意を表し、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 それにしても酷い惨状だ。停電中はラジオからの情報で自分の取るべき行動を考えるので精一杯だったが、電気が復旧し、落ち着いてテレビの映像を見られるようになって、あまりの惨状に声を失った。死者、行方不明者は何名にのぼるのだろうか。津波で壊滅した街、復興は可能なのだろうか。原発はどうなるのだろうか。
 とにかく今は、知恵と力を出し合って助け合っていくしかあるまい。そしてこのような自然の力に抗うことは不可能であることを自覚し、今後の災害に備えて、いかに減災するかの手立てを真剣に考えていかなくてはならないだろう。それは行政の仕事であるだけでなく、一人一人の自覚と責任に帰するところが大きいだろう。

2011/2/3
 当初の長期予報に反し、1月は厳しい冬となってしまった。
 冬の天候を大きく左右するもののひとつに北極振動というものがある。寒気を放出しやすい状態と蓄積しやすい状態がある。1月は寒気放出パターンが続いたが、2月は蓄積パターンに転換するらしい。厳しい冬から開放されることになるかも知れない。
 冬の長期予報では、この北極振動の予想も重要なファクターだが、実はこれが難しい。メカニズムがまだしっかりと解明されておらず、兆候が直前にしか掴めない。これでは長期予報に活かせない。今後の研究に期待したい。
 残念ながら、現時点で長期予報の精度はまだまだ低い。低いからこそ断定ではなく確率予報にしているのだが、これが断定的な表現で報道されていることが多いのも残念だ。確率予報だからこそわかることや、利用上の利点もあるのだが・・・。

2011/1/6
 謹賀新年。本年もよろしくお願いします。
 防災科学研究所などが、最新鋭の気象レーダーを設置するらしい。報道からは空間細分の密度はわからないが、観測の時間間隔は1分で、現在の気象庁のものより短いスパンで細かく観測されるようだ。
 今後、局地的な豪雨の予測精度は上がるに違いないが、それでも前の日から予測できるわけではなく、せいぜい10分前にしか予測できないことには注意しなくてはならない。現象の時間的、空間的スケールの小ささの問題から、将来も予測可能時間が大きく延びることはないだろう。
 とすれば、今後は予測から現象発現までの短い時間に、いかに防災・減災措置をとるかという観点で、研究や、インフラ整備、啓蒙活動を進めることが必要だろう。

2010/12/16
 田沢湖の固有種で、絶滅したクニマスの子孫が山梨県の西湖で見つかった。交雑もされていないという。クニマスの絶滅を子供の頃から残念に思っていたので、子孫が生き続けていたことは喜びたい。
 しかし、別のところで生き延びた原因は人間による卵の放流であるという。これは一種の生態系の破壊である。クニマスの放流は許され、ブラックバスの放流は駄目、というのでは明らかな矛盾である。
 田沢湖のクニマスの絶滅は、電源開発などの国策により強酸性の川の水が引き込まれたことによる。絶滅も、子孫の発見も、人間の独善による自然破壊の結果として起こったのは皮肉だ。
 一般に地球温暖化と呼ばれる気候変動が進んでいるという。気候が変動すれば、当然の帰結として絶滅する生物も出てくる。地球温暖化の原因については人為説が根強い。人為説が正しいとすれば、一方で生物(種)の絶滅の危機を作っておいて、一方で生物多様性を守ろうと活動をする人間って何なのだろう。過ちに気づいたといえば聞こえがいいが、自然破壊と知っていて経済活動を行っているのは人間自身である。経済活動を行う唯一の存在である人間の性(さが)であろうか。

2010/11/27
 総務省が、気象庁に対して緊急地震速報の改善勧告を出した。問題点として「(一部略)全対象予報区の全域で主要動の到達までに発表が間に合ったケースは、(12回中)1回のみであった。」「基準以下であったため緊急地震速報を発表しなかったが、基準以上であったものが5回あった。(表現を筆者が一部修正)」などを挙げている
 私はこの指摘を甚だ疑問に思う。まず前者であるが、震源域が近い地域では原理的に間に合わないのであって、この点を指摘しても永久に改善は不可能である。後者に関しては、5回とも観測した最大震度が5弱で基準の最低値、予測した最大震度が4で基準以下の最高値で、わずか1ランクしか違わない。これは誤差の範囲といっていいのではないだろうか。他の結果を見ても、私には一応満足のいく精度に思える。
 もちろん、より正確に予測できるに越したことはないが、予想に完全な精度を求めることはできない。もしそれができるなら機械的にやらせればいいわけで、出来ないからこそ気象庁の存在価値がある。この勧告は、正しい評価に基づいていないように思える。今、より重要なのは、これも総務省が述べていることであるが、「仕組みや活用方法等の周知啓発の充実」であろう。マスコミには、誤っているかもしれない問題点をあげつらうように取り扱う報道よりも、その誤りを見つけて正したり、より必要な周知啓発の役に立つような活動に手を貸して欲しい。
 なお、地震は、気象予報士の守備範囲でない。誤解なきよう一応お断りをしておく。

2010/10/20
 17日、潟上市と八峰町でまた竜巻被害が発生した。15日には、新潟県の胎内市でも発生している。実は、9,10月は竜巻発生の多い月である。日本海沿岸では、夏の間日本海が暖まっているところに冬に向けて上空に寒気が入ると、「大気の状態が不安定」になって活発な積乱雲が発達し、その下に竜巻が発生しやすくなる。
 竜巻は突風のひとつとして扱われているが、竜巻に注意しなければならないのは「強風注意報」ではなく「雷注意報」が発表されているときである。それは、雷と竜巻の元となるのがどちらも積乱雲だからだ。では「雷注意報」が発表されているときはいつも竜巻に注意しなければならないかといえばそうではない。どうやって見分けるか。
 あなたは注意報の中身に注意しているだろうか。報道でも注意報名しか伝えられないことが多いので、多くの人はあまり注意していないのではないだろうか。同じ注意報名でも、その中身を見ると、「注意警戒事項」や「付加事項」はその都度異なっている。ここに「突風」や「竜巻」という表現があったりなかったりするのだ。
 防災情報は身を守るため、財産を守るために重要である。できるだけ注意報名だけでなく、その内容や、関連する気象情報等の中身にも注意を払っていただきたいと思う。

2010/09/09
 やっと朝夕涼しくなった。梅雨の間は雨を、一昨日までは暑さを避けるため車で通勤していたが、今日から自転車に切り換えた。
 それにしても異常な夏である。気象庁が「異常気象分析検討会」で要因を分析するほどの暑い夏であった。台風9号の動きも面白い。北陸で上陸し、東海に抜ける進路は今まで見たことがない。
 この夏の東北地方の平均気温の平年差は+2.3度である。平熱が36.5℃くらいの私なら、38.8℃の発熱をしたのと同じだ。これは大変なことである。地球温暖化したら平均気温が何度上がるかはいろいろな説があるが、2度程度という説もある。もしそうなれば、毎年今年のような夏が訪れることになる。6度説が現実になったら・・・。

2010/07/09
 各地で豪雨が発生し、災害が起きている。
 雨の降り方の特徴は、長時間降り続けるのではなく、短時間に非常に激しく降ることだ。このような雨を降らせるのは発達した積乱雲であり、その組織化だ。
 組織化された積乱雲の発達条件はいろいろあるが、下層に暖湿気流が継続的に流れ込み、上空に寒気が入り、下層・中層の風向が異なり、上層ほど乾燥しているなどが上げられる。更に地形効果や、ヒートアイランド現象などが補助的要因として加わる。
 気温が高い空気ほど沢山の水蒸気を含むことが出来る。従って、気温が高いことも要因のひとつとしてもよいかもしれない。自然現象としての豪雨は避けられないかもしれないが、ヒートアイランド現象や人間活動による温暖化なども拍車要因となっているとするならば、我々にも努力できることがあるのではないだろうか。

2010/06/28
 たまには気象を離れた話題を。相撲界の賭博問題が騒がれている。事業仕分けでは、宝くじの収益金の使い道が槍玉に上がった。いくつかの公営競技では、使い道を前面に出したCMを放送している。
 何の努力をすることなく儲けられる可能性のあるギャンブルは麻薬だ。一度嵌まるとなかなか抜け出せない。そして残念なことに、金に困っている人ほど手を出し、身を滅ぼす方向に進むケースが多いような気がする。
 殆ど全てのギャンブルは胴元が儲かるようになっている。しかも人間の欲得の心につけ込んでだ。使い道を強調して売り込むのは詭弁や偽善、使い道目的なら見返りをちらつかせるのではなく、はじめから寄付を募って浄財を集めればいい。
 人間の射倖心をくすぐり、中毒や家族崩壊、破産、自殺まで招きかねない方法で金を集めるやり方はいかがなものか。私は、賭博はもちろん、競艇、競馬、トト、ロト6、パチンコ、宝くじ、etc.、全てのギャンブルや、それに類することが世の中からなくなってくれればいいと思っている。人の射倖心の上に成り立つ経済理論など、全く虚しいではないか。悪銭身につかず。努力することなく、たまたま儲けた金には、金額以外の価値は何もないだろう。汗水流して得た金だからこそ、そこに感謝と勤労の喜び、家族の笑顔など、心を豊かにする価値が生まれるのではないだろうか。

2010/06/23
 南アでのワールドカップサッカーのグループリーグも、日本のリーグ突破を懸けた大一番も控え、佳境である。
 ところで、10か所ある会場のうち6か所は標高1000m以上である。1700mを越える会場もある。標高が高いと空気が薄い。標準的な大気の状態で計算してみると、標高1500mでは、標高0mに比べて空気密度(濃さ)が80数%しかないことがわかった。当然ながらボールの空気抵抗に大きな影響を与え、飛距離や曲がり具合が変わってくるし、体力の回復力にも違いが出てくるだろう。
 グループリーグでは、欧州の多くの有力チームが苦労しているようだ。チーム事情に問題のあるチームもあるようだが、こういった試合環境にも一因があるのかも知れない。

2010/05/28
 防災機関や気象業界にとって、昨日は大変な1日だった。気象庁は、昨日の13時から、注警報の発表単位を市町村別に細分化し、新たに「竜巻発生ナウキャスト」、「雷ナウキャスト」も開始した。更に、週間予報の改善や、外部には直接出ないながら、予報支援資料も大幅な変更が加えられた。関係機関は対応に大わらわであったことだろう。
 様々な情報が増え、あるいは精度を増すのは良いことだが、正しい理解と利用法を身につけなかれば意味がない。気象庁には啓蒙活動を、利用者側には積極的な知識習得を望みたい。
 注警報の細分化は、防災関係者や住民にとっては有益だが、気象台や伝達機関はかなりの負担増になるだろう。又、竜巻発生確度ナウキャストは適中率が低く、使い方には工夫と注意が必要だろう。我が社でも、これからいろいろ工夫をしていかなくてはならない。

2010/04/19
 アイスランドで火山が噴火し、多方面に多大な影響が出ている。空の足や、それにともなう物流などが目先のこととして報道されているが、影響はもっと広範にわたるだろう。
 噴煙の量と継続期間、粒子の大きさなどにもよるが、気象や気候にも影響がある。1991年にフィリピンのピナツボ火山があったときは、その後2年ほど(少なくても北緯20〜30°帯では)夏の気温が大幅に下がったという。
 細かい噴煙は長期間上空に滞留し、日傘効果といわれる現象で日射を遮るといわれている。熱収支が変われば、程度問題を別にして、気象や気候にも影響が出る。
 我々民間予報事業者も資料として利用している気象庁の予報モデルに、どの程度日傘効果やその他の噴火の影響が取り入れられるのかを私は知らないが、予報の精度にもマイナスの影響が出るのではないかと心配である。

2010/03/22
 静岡県で、野焼きの火により3人の方が亡くなられた。ご冥福をお祈りした。
 今朝の新聞によると、気象情報の確認はしなかったとのこと。なぜこのような風の強い日に野焼きを行ったのだろうか。実施の判断に甘さがあったことは否めないだろう。
 責任者は「天候が悪化するとは思わなかった」と発言している。多くの遭難後の談話でも似たような発言を聞く。「朝の空をみて大丈夫だと思った」などである。天気は時間とともに変わるという当たり前のことが理解されていないのは大変残念なことだ。
 天気予報は出す側がより精度の高い予報を出すことも大事だが、利用者側が正しい知識に基づいて利用することがもっと大事だ。どんなに安全に配慮して作られた車も、利用者が正しい運転の仕方を知らなければただの凶器に過ぎないのと同じだ。

2010/03/06
 気象庁が謝罪会見を行った。なぜだろう。気象庁は何か悪いことをしたのだろうか。チリ中部沿岸で発生した地震による津波について津波警報を発表し、津波の高さが予想ほど高くなかったかわけだが、謝罪する必要があったのだろうか。
 確かに津波の高さや到達時刻がピタリと当るに越したことはない。しかし、太平洋の津波観測網の密度を考えれば、そんなに精度の高い予想は原理的に望めない。市民はそういった現実を知るべきである。
 問題なのは気象庁ではなく、市民の意識の低さだ。あれだけの警報が出されても、避難率は数パーセントだったという。もし、予想通りの高い津波が来たならばどうなっていたことだろう。あまりに防災に関する知識が希薄であるといわざるを得ない。
 今、気象庁に必要なのは謝罪ではなく、学校や自治体、マスコミ等を巻き込んだ大々的な啓蒙活動であろう。反省すべきは気象庁ではなく避難しなかった、いや意識の低い市民だ。自分のところは大丈夫だろうという根拠のない楽観的な考え方は防災にとってマイナスでしかない。予想通りの津波が来なかったのは気象庁の責任ではなく、不幸中の幸いでしかない。

2009/12/15
 昨日気象庁から「平成21年の世界と日本の年平均気温について(速報)」の報道発表があった。これによると、今年もかなり平均気温の高い年(世界では観測史上3位タイ、日本では7位)であったようだ。やはり気候変動は進んでいるのだろうか。
 平均気温が高くなった要因のひとつとして、エルニーニョ現象が挙げられている。否定する根拠は持ち合わせないが、エルニーニョ現象を「要因」として挙げることには疑問を感じる。
 エルニーニョ現象が起こると、日本では暖冬・冷夏になりやすいという。これは統計的な事実であろう。しかし、因果関係があるかどうか、すなわちエルニーニョが原因なのかどうかは別問題である。例えば、風邪を引けば熱が出たり、咳をしたり、鼻水が出たりする。統計的には、咳が出ているときは熱も出ていることが多いだろう。しかし、咳も熱も原因は風邪であって、熱の原因が咳ではない。
 天候が話題になると、よく原因はエルニーニョですか、と聞かれる。いつも返答に困る。エルニーニョも暖冬も、地球全体の気候状態の一面に過ぎず、何が原因かを特定することは相当に難しいと思う。まあ、マスコミや世間を取りあえず納得させるには、エルニーニョは便利ではあるのだが・・・。

2009/12/07
 この季節になるといつも気になることがある。ライトアップだ。クリスマスに向けてということか、全国で、いや、世界中でいろいろなライトアップが増える。およそ1か月くらい続けるものが多いようだ。
 昨今、二酸化炭素の排出量削減が声高に叫ばれているが、ライトアップに関しては何故か「やめよう」「減らそう」という声を殆ど聞かない。不思議なことである。この季節にしかやらないということは、殆どがなくても何ら差し障りのないライトアップだろう。何故削減の声が上がらないのだろうか。
 あるところのライトアップでは、LEDを3万個使うのだという。LEDの消費電力は小さいが0ではない。何Wかは知らないが、100Vの電源を使うものは数Wらしい。仮に1Wだとして、3万個使えば3万Wだ。60W電球を500個点けているのと同じである。2Wなら1000個分に当たる。4人家族が各々の部屋で60Wの電球を点けている状態の家庭が250戸増えることに相当する。
 ライトアップによる精神的プラスや経済効果もあるかも知れない。しかし、何か釈然としないものを感じる。国だけでなく、企業や個人、諸団体にも事業仕訳が必要ではないだろうか。

2009/11/10
能代市竜巻爪跡  10/30日、秋田県能代市で竜巻が発生した。人的被害が軽傷者ひとりで済んだのは不幸中の幸いであるが、被害地域の幅は狭いものの相当な距離に及び、半壊した家屋もあるなど被害は小さくない。被災された方々にはお見舞いを申し上げたい。
 夕方、秋田朝日放送の「スーパーJチャンネルあきた」に出演した際に見た竜巻の映像は衝撃的であった。日本でこれだけの規模の竜巻が発生するのも稀だと思うが、更にあれだけ鮮明、かつ長時間に見やすい画角で撮影された竜巻映像は、相当に希少かつ貴重であろう。
 右の写真は、翌日被災地で私が撮影した被災家屋である。手前のブロック塀も倒れている。報道ではコンクリート製の電柱が折れている様子も紹介されており、竜巻の威力と恐ろしさを痛感する。
 現在の観測網と予報技術に基づいた気象予測では、1時間以上前に竜巻発生の場所と時刻を詳細に特定・予報することは不可能に近いし、仮に出来ても物的な被害をなくす手段はなかろうが、今後少なくても人的被害を食い止める観測網、予報技術、情報伝達等の防災手段が開発されることを願ってやまない。
 (許可なくこの写真・映像をダウンロードしたり、二次利用したりすることを、固くお断りします。)

2009/10/16
ジェット巻雲  9/30日夕方、秋田市で奇妙な雲が見られたとニュースになっていた。インターネット上では地震雲かといったサイトも見られる。この雲を私は見なかったが、知人が携帯で写真に撮っていたので、了解を得てここに掲載させていただく。
 この日のひまわり画像を見ると、秋雨前線に対応する雲の帯の明瞭な北縁がちょうど秋田市付近にかかっていた。ジェット気流が対応しており、いわゆるジェット巻雲である。雲としては決して珍しくないが、太陽との角度、雲の出ている場所と帯の向き、雲と見る人の位置関係等で、影の出方や夕焼け色に染まっていることなど、このような見え方をすることはかなり珍しいかもしれない。
 地震雲については私は否定も肯定もしない。否定する根拠はないが、逆に科学的に納得の出来る生成理由を見たことも聞いたこともない。いわば消極的な否定派だ。そして今回の雲は地震雲などではないと思っている。

 (許可なくこの写真をダウンロードしたり、二次利用したりすることを、固くお断りします。)

2009/09/29
 鳩山総理の温室効果ガス排出量25%削減という発言が話題を呼んでいる。正直、実現は難しい数字に思えるが、そのことより各国の関心を集め、非協力的な意見の国にも少なからぬ影響を与えている点を評価したい。
 私たち市民は、数字の大小によらず、簡単に出来ることから積極的にやっていくことが大事だと思う。私はしばしばスーパーに買い物に出かけるが、レジ袋は極力断っている。しかし、私以外にマイバックを使うなど、レジ袋を断っている人を殆ど見た事がない。秋田県民の意識は低いと聞いたことがあるが残念なことだ。

2009/08/10
 東北地方は梅雨明けの発表がないまま立秋を過ぎてしまった。6年ぶりに梅雨が明けないことになりそうだ。この期間、秋田県では日照がかなり少なく、雨は多く、また、これからも日照が少ないと予想されており農作物への影響が心配である。
 夏のない今年、まだしばらく予報の難しい期間が続きそうだ。

2009/07/30
 前回この欄を更新してから約2週間、この間に人命も奪われた集中豪雨や、山での遭難、竜巻など、痛ましい出来事がいくつも起きてしまった。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災者の皆様にはお見舞い申し上げたい。
 これらの出来事は、梅雨時の不安定な気象状況が大きな原因となっているが、この梅雨時というのは大変に気象予報士泣かせの時期だ。天気予報をするには根拠となる資料が必要で、民間の気象会社も気象庁から配信されるデータを使っている。しかし、このデータが梅雨時は非常に不安定なのだ。主たるデータは1日4回、6時間ごとに配信されるのだが、同じ時間帯の予報資料でも、最新のものと6時間前のものとで内容が大きく異なることは珍しくない。ここでは細かい説明は出来ないが、結果として天気予報は外れやすくなり、またコロコロと変わる。利用者の皆様も、その辺りの事情をご理解のうえ、上手に気象情報を利用していただきたい。
 梅雨明けが遅れている。早く明けてくれないだろうか。農作物への影響も心配だ。

2009/07/13
 今日も秋田は荒れ模様だ。警報も発表されている。気象情報には十分注意していただきたい。
 10日にも警報が発表された。秋田市では一部に避難勧告も出された。しかし避難した方はいらっしゃらなかったらしい。これはいただけない。家が心配、離れたくないという気持ちはわかるが、それで命を失ったり大怪我をしたりしては何もならない。何事もなかったのは良かったが、これは結果に過ぎない。
 99回の避難勧告が空振りに終わっても、1回の避難勧告が実際の災害に繋がったならば、99回の無駄の合計よりも1回の被害損害のほ方が大きいだろう。まさか自分が、という希望的観測は捨てるべきと思う。

2009/05/05
 3日、台風第1号が発生し、気象庁から今年初めての台風進路予報が発表された。台風進路予報はこの予報から5日先まで予報されるようになった。
 早めに進路予想がわかるのは、防災・減災上有用と思うが、一般の方々には予報には誤差があり、先に行けば行くほど誤差が大きくなることを十分に理解し、早めの対策検討し、かつ無駄な対策をしなくて済むよう、正しく気象情報を利用していただきたい。もちろん、どのように利用するのが正しいのかをアドバイスするのも私達気象の専門家の仕事だ。是非ご利用いただきたい。

2009/01/23
 正月早々ひどい風邪を引いた。熱はそれほど上がらなかったが喉の腫れがひどく、症状が出てから3週間経った今も喉に若干の違和感がある。
 風邪やインフルエンザのウイルスは湿気に弱いそうだ。空気の乾燥する冬のこと、室内では加湿器を使うなど、室内環境へも気配りしたい。

2008/12/29
 何ともひどい数日だった。これほど気象警報が出されっぱなしというのもあまり記憶がない。寒気の強さの割りに降雪量は少なくて済んだ感じだが、風が酷かった。
 大晦日から三が日にかけても少し荒れそうだが、来年は「初めよければ全てよし」とはいかないのだろうか。
 お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、弊社は11月に移転しました。新年は心も事務所も新たに頑張ります。良いお年を。

2008/11/10
 2日朝、秋田県八郎潟町で竜巻被害があった。竜巻は、積乱雲に伴って起こる強い上昇流を伴った激しい渦で、強い日射などが原因で雲がなくとも発生する「じん旋風(つむじ風)」とは別物である。
 竜巻やダウンバーストは小さいながら強烈で、しばしば災害を引き起こすが、小さいこと、寿命が短いことなどのため、いつ、どこで発生するかを予測することは非常に難しく、現在の科学技術では事実上不可能と言っていい。しかし、竜巻などが起こりやすい状態であるということまでは予測できる。積乱雲が発生発達しやすい状態が竜巻の発生する必要条件であるが、こういったときは雷注意報が発表され、気象情報番組では「大気の状態が不安定」と説明されることが多い。竜巻やダウンバーストを起こす積乱雲は、積乱雲全体の1%にも満たないだろうが、この言葉を聞いたら注意しておくにこしたことはない。雷は桁違いに起きやすいから注意したい。
 いつの日にか観測網が整備され、精度の高い予報ができる日が来ることを願いたい。

2008/10/15
 1か月前のやや古いニュースだが、サッカーの試合中に落雷被害に遭った事故に際して、引率者や主催者の注意義務違反があったとする判決が確定した。落雷の予見可能性が大きく問題であるが、ほんのちょっとの知識があれば予見は可能だ。事故当日は雷鳴も稲妻も確認されていたというから、危険性は知識がなくとも認識できたのではないかと思える。
 私自身、以前高校サッカー部の監督や部長を務めた経験があり、その意味からも他人事ではない。学校行事に限らず、旅行でも登山でも、引率者の最大の責任は、引率を受ける大勢の人々の安全を守ることである。そのためにもほんのわずかな気象の知識を身につけてもらいたいと思う。

2008/08/18
 8月に入って秋田も晴れの日が多く、夏本番、という季節を迎えたが、天気図を見ると少し変わったところがある。
 通常梅雨明けすると、南の太平洋高気圧が張り出して、その圏内に入って晴れることが多いのだが、どうも今年の夏は、北日本まで太平洋高気圧が張り出して来ていない。4日あたりから晴れの日が長く続いたが、日本海に西から移動してきた高気圧が居座ったためだ。
 太平洋高気圧が張り出した場合、その縁辺流の南風が吹き込み蒸し暑くなることが多いのだが、今年の場合は高気圧の中心が日本海にあるため南風が吹きにくく、暖かい空気が流れ込まないことと山越え気流になりにくいことなどで気温が上がりにくく、最高気温が32℃を超えた日がまだ1日しかない。ちなみに、8/1〜8/17で数えると、去年は7日、一昨年は6日あった。
 今年の秋田の夏は、比較的過ごしやすい夏だった、ということになりそうだ。

2008/07/31
 19日に、「東北北部の梅雨が明けたとみられる」と気象台から発表されたが、その後も梅雨型の気圧配置の日が多く、ぐずついた空模様が続いた。私は、19日の段階ではまだ梅雨は明けていなかったと考えている。
 ところで、なぜ「明けたと見られる」といったはっきりしない表現なのかご存知だろうか。実は、気象台の梅雨入りや梅雨明けの発表は速報であって確定日ではない。気象庁では、秋口に気象状況を改めて精査して、正式な梅雨入り梅雨明け日を確定しており、速報値が修正されることも珍しくない。
 今年の東北北部の梅雨明けの日は、後日、昨日か今日に修正されるのではないかと睨んでいる。

2008/07/11
 ここのところ、天気図に妙なことが起こっている。7月4日以降日本付近から梅雨前線が消え、6日午後には東アジアから梅雨前線が消えてしまった。これにタイミングを合わせて、四国、九州では「梅雨明けしたと見られる」と気象台から発表された。
 秋田では、3日以降梅雨らしく?ぐずついた空模様が続いている。各種天気図等で解析すると、確かに前線は描きにくい状況なのだが、広範囲をぐずつかせるに足る要素は整っている。時期的にいっても梅雨の季節は続いているとしか言えそうにない。
 実を言うと、予報が大変しにくくなっている。明瞭ではないが確実に存在している降雨等の要素が、影響するかしないか微妙な状況が続いているうえ、予報の基本資料となる数値データが、例えば降水量と降水確率に矛盾した数値が対応していたりする。概況説明も、一般の方にわかりやすい表現が難しい。梅雨前線よ、早く復活してくれ・・・?。

2008/05/20
 気象庁の台風進路の予報円の半径が小さくなるそうだ。
 予報円とは、その予報時刻に台風の中心が70%の確率で存在する円だ。即ち、円の半径が小さくなることは、台風進路予報の精度が上がったことを意味する。喜ばしいことだ。しかし、この円の半径を「点」といえるほど小さくすることは、残念ながらおそらく不可能。30%は台風の中心が円の外に来てしまうということも忘れずに、台風情報を活用したい。
 今年の5月は台風の発生数も多く、進路も結構日本列島に近い。少し気になるところだ。

2008/05/07
 大型連休が明けた。4月から続く高温傾向も一段落したように見える。
 4月の秋田市の月平均最高気温は史上4位の記録だったようだ。ちなみに1位は2002年である。気象庁では、「ある場所(地域)で30年に一回程度発生する現象」を異常気象と定義しており、その意味では「異常気象」には当らないが、やはり普通ではない。
 仕事柄、原因は何ですか、とよく聞かれる。日々の現象を説明することはそれほど難しくないのだが、長期にわたってそれが続く原因を説明するのは難しい。それは、長期的な現象の説明には、ある程度の期間の平均的な状態が表現された天気図類が必要で、それも全地球規模のものでなければならないからである。そしてそのような資料は簡単には手に入らないのだ。エルニーニョだラニーニャだと誤魔化すことは出来るが、地球規模の現象が地球上のごく一部の様子だけ取り上げて説明できるほど話は簡単ではない。

2008/04/22
 ここのところポカポカ陽気が続いている。平年よりかなり暖かく、6月上旬並みの最高気温を記録した日もある。丁度ソメイヨシノの開花時期と重なり、一気に花が咲いた。
 今朝までここに県内の開花予想日を掲示していたが、恥ずかしながら大外しであった。3月発表の予想を4/5に修正したのだが、それでも修正しきれていなかった。修正時の長期予報資料によると、開花まで、平均して平年より1℃程度気温の高い日が続きそうだったのだが、実際はもっと高かった。しかも、開花時期に気温の上がらない日が殆どなかったことも外れる要因となった。
 言い訳するつもりはないのだか、実をいうと、独自の予想手法(複数ある)による開花日のひとつに13日というのもあった。3月当初の予報に、思い切ってこれを採用しなかったのが悔やまれる。

2007/11/20
 ほぼ2か月ぶりの独り言になる。少し忙しかったのだ。気象庁では「数値予報」といって、地球全体を細かい碁盤の目に区分けし、その格子点の気象状態をコンピューターで逐次計算して天気予報を行っている。この格子の間隔はこれまで約60kmであったが、明日夕方の予報から約20kmに細かくなる。これにより、予報精度が上がることが期待される。
 この数値予報資料は我々民間気象会社にも配信されるが、今回の変更に伴ってデータのフォーマットも変わり、受信ソフトや予報システムの変更が必要となり、この対応に追われていたのだ。まだチェックが不十分な面があるが、変更は一応間に合ったようだ。
 予報精度は確実に上がると思うが、従来の予報と「癖」が異なる可能性が高く、ここしばらくの間はかえって予報精度が悪くなったように感じられるかも知れない。
 日本の空は、気象庁の変更を待たず、例年よりかなり早い冬将軍の襲来を迎えた。新しい数値予報はこの冬将軍をうまく捕らえてくれるだろうか。

2007/09/21
 17日、秋田県内は県北部を中心に記録的豪雨に襲われた。調査が進むにつれ、被害の大きさが明るみに出てきている。被災された方々にお見舞い申し上げたい。
 この時の気象状況について少し分析してみた。豪雨に見舞われた地域には秋雨前線がかかり、前線は西から東へと移動していたものの長時間同じ場所にかかり続けていた。その前線に台風11号から変わった低気圧の影響で、暖湿気流が流れ込んだ。下層の風の分布が次々と新しい雨雲を発生しやすい状態となっていた。雨雲は奥羽山脈に堰き止められ、上昇気流が強化されて更に発達した。こういった複数の要因が重なった豪雨だったようだ。
 今回の豪雨では、降水量の記録がいくつか塗り替えられた。まさに異常気象と言えるが、地球温暖化が進めば、こういった現象も「異常」ではなく「通常」に変わってしまうかも知れない。

2007/09/08
 台風9号が秋田県を直撃した。当初の予想より速度が速く、思ったより早くにやってきた。また、直撃の割に秋田県では大きな災害につながらずに済んだ。秋田以外では亡くなった方もいらっしゃり、被災された方々にはお見舞い申し上げたい。
 ところで、県内のある方から台風に関する問い合わせの電話が入った。丁度台風がその方の居住地を過ぎた頃だったため「台風はもう通過しました」と伝えたところ「じゃあもう安心ですね」と返された。「いえ、台風は通過後の方が吹き返しで風が強まりますから・・・」。別の話だが、台風進路予想図で予報円が段々大きくなるのを見て、「台風がどんどん発達している」と思った方もいた。残念なことだが、台風に限らず、まだまだ気象に関する正しい理解は進んでいないようだ。
 こうした正しい知識を広めるためにはどうしたら良いのだろう。正しい知識は自分や家族を守ることに繋がるし、逆に不要な不安を持たずに済むこともあるだろう。弊社としても講習会等を通じて啓蒙を続けていきたいが、教育を通じて、あるいは気象庁が広報番組を作って放送するなど、もう少し国に動いてもらうことはできないものだろうか。

2007/09/02
 2009年から、気象庁の台風予報の期間が5日先まで延びるらしい。基本的には良いことだと思うのだが、少し心配もある。
 それは精度に対する利用者側の理解である。新しい予報の精度がどの程度となるのかわからないが、予報には誤差があり、特に先に行けば行くほど誤差が大きくなることを承知の上で利用しないと大きな判断ミスを犯すことになりかねない。台風予報に限らず、気象庁には気象現象や予報に関する啓蒙に、更に力を入れてもらいたいと思う。

2007/07/04
 台風5号が日本各地に爪痕を残しながら走り去った。秋田では東北三大祭のひとつの竿燈まつりが影響を受けた。
 久しぶりに詳細に進路を追跡したが、予報進路中心線に比べて右に振れたり左に振れたり、進んだり遅れたり、全く台風の動きは複雑だ。一般の方にはあまり認識がないだろうが、台風があると天気予報、正確に言えば、我々の天気予報の根拠資料となる気象庁の数値予報の精度が落ちる。長くなるので詳しい説明は省略するが、これは避けられないことである。従って、台風が日本付近にあるときの天気予報は要注意である。
 私は概況の解説に精度が落ちていることを断るようにしているが、利用者にとっては納得のいかないことかも知れない。気持ちはわかるのだが、まことしやかに外れる可能性の高い予報を伝えるよりは、事実を伝えた方が利用者にとって有益と私は考えている。
 それにしても大イベントに台風が重なると気を遣う。今回は情報更新もかなり細かく行った。正直疲れたが、果たして皆さんのお役に立てただろうか。

2007/06/16
 一週間ほど前、学校行事で山をハイキング中に雷に襲われるという事故が栃木県で発生した。大事に至らなかったのは不幸中の幸いであった。学校は、気象情報を調べてはいたものの、雷注意報までは把握していなかったとのことだ。
 雷は非常に局地的な現象である。雷注意報が発表されていたとしても、いつどこで雷が発生するかを予測するのは専門家でも難しい。今まで何もなかったところに急激に雷雲が発達し、発生から30分程度で発雷することも珍しくない。
 発雷する地域が、注意報の対象範囲に対して非常に狭く、注意報の発表頻度も結構高いことを考えると、雷注意報が出ているだけで屋外行事を中止するのは、準備が徒労に終わる割合が高くなり過ぎてあまり現実的ではないだろう。最も有効な対応は、雷発生の恐れがあるときに、地域の専門家(気象予報士など)に行事中の天候を監視してもらうことだろう。発雷の可能性のある積乱雲は、気象レーダーを監視することである程度事前(最悪でも数十分前)に把握できる。監視場所から現地への連絡手段さえ確保できればよい。また、気象の知識がある引率者が、携帯サイトで気象レーダーの画面を確認する方法もある。
 レーダー監視までは依頼されていないが、学校行事の度に弊社に天気予報を依頼してくださる地元小学校もある。結構喜んでいただいている。気象に限らず、専門家を利用した情報収集と判断は、この手のリスクやコストを減らすのに有効だと思う。

2007/05/28
 前回、今シーズンから台風予報の図表示の方法が変わると書いたが、気象庁は台風予報の図表示のみならず、予報用語も大幅に見直して今シーズンから変わっている。
 昨日、九州の複数箇所最高気温が35℃を超えた。気象庁では、最高気温が35℃以上の日を今シーズンから「猛暑日」と呼ぶことにしており、初めての該当事例となった。
 新しい用語のうち、一部は周知期間を半年ほど取るようだが、それらの中に、日々の天気予報で使う時間帯を表す言葉が含まれる。これをお読みの皆さんも、見直された新しい予報用語がどんなものか調べてみてはいかが。気象庁のホームページ(こちら)に載っている。

2007/05/12
 今シーズンから台風予報の図表示の方法が変わる。今回気象庁が定めた「台風予報の図表示方法の指針」は、これまでの他の指針類と違い、情報の受け手を相当に意識した、ある意味画期的な指針に見える。
 台風の進路予想図に限らず、様々な場面で気象情報が誤解のもとに利用されているのは残念なことだが、伝え手側がそれを意識することは、多少なりとも正しく、有効に気象情報が活用されることにつながるだろう。
 それはともかく、これをお読みの皆さんにも新しい台風予報の図表示の方法を知っていただきたい。気象庁のホームページ(こちら)に載っているので、是非ともシーズン到来前にご覧頂きたい。

2007/04/27
 久々に気象ネタから外れて。隠蔽されていた原発事故が明るみになった。8年も前の事故だという。
 地球温暖化の大きな原因の一つが二酸化炭素濃度の増加とされ、二酸化炭素を排出しない原発はクリーンな発電方法だと宣伝されている。とんでもない話だ。人間は完璧ではない。人間が設計し、人間が運用するものから事故をゼロにすることはできない。作為が絡めば尚更である。
 漏れる恐れのある放射線、核廃棄物。これだけ考えてもクリーンだなんて言えるわけがない。万が一テロや戦争で原発が標的にされたらどうなるのだろうか。核廃棄物は300m以下の地下に埋めるというが、本当に安全と言えるのだろうか。私たちは、本当にクリーンな発電方法を考えなくてはならないだろう。

2007/03/14
 気象庁の「さくらの開花予想」にプログラムミスによる誤りがあったとのこと。お粗末。他山の石として、社内を引き締めたい。
 それはそうと、これに関する報道で気になることがある。テレビを見ていると「咲くはずの日になっても」とか「咲く予定が」などと表現されている。気象庁は、咲くことを「約束」してもいないし、「予め定め」てもいない。そもそも予想には2〜3日の誤差があることの断りがついている。
 気象庁のミスは2〜3日で済まなかったから糾弾されても仕方が無いが、私ががっかりしたのは予想が余りに確定的にとらえられている感じがすることだ。残念ながら、天気予報はどんなに科学技術が進んでも誤差をゼロにはできない。つまり必ず外れることがあり、確定的ではないのだ。この外れを少なく、小さくすべく、気象庁も民間気象事業者も努力しているわけだが、情報の受け手が情報の性質を正しく理解していなくては情報の価値は半減する。少なくても、伝え手のマスコミ関係者には正しい理解の下に適切な語句を使って欲しいと思う。

2007/02/15
 八甲田山の雪崩で痛ましい事故が起こった。新聞等を見ると、雪崩予想の困難さ、ガイドの判断の適否などが論じられているが、少し雪崩ばかりに視点が偏り過ぎてはいないだろうか。
 決行の判断が朝何時に下されたかはわからないが、当日6時前には強風注意報が発表され、いずれ警報に切り替える可能性があることまで注意喚起されていた。そこまで見なくとも、気象情報番組を見れば、天気は下り坂で、急発達する低気圧が接近してきていることはわかったはずである。ただでさえ天気も変わりやすく、危険の伴う冬山に入ろうというのであるから、少し慎重さに欠けてはいなかっただろうか。
 山スキーに限らず、天候を考える場合、多少のトラブルが起こっても無事に帰着できるまでの時間的余裕を考え、それまでに気象状況が安全でありつづけるかどうかまで考えるべきであろう。そこまで考えた場合、あの気象状況での入山は、私には無謀に思えるのだ。安全はギリギリであってはいけない。人命に関わるならば、安全にも余裕を持ってほしいものだ。

2007/02/13
 地元紙でも写真付きで紹介されたが、5日に二重の円弧状の雲が出た。その奇妙な形を不思議に思った目撃者も多かったらしい。
 私にも問い合わせが何件かあった。最初の問い合わせを知人から受け、私も会社の窓から確認したが、非常に不自然な形状で奇異に感じた。円弧を描いている以外は飛行機雲に似ていると思ったが、そんな航路があるはずもなく、説明のつく雲の成因が思いつかなかったたので、その可能性だけ伝えて電話を切った。数分後、航空機が飛行機雲を発生させながら飛んでいるのを確認したと、再びその友人から連絡があり、全ての謎が解けた。きっと軍用機だったのだろう。
 あれを見て、地震雲を疑った人もいたと思う。そういえば、少し前にテレビで地震雲が扱われ、専門家と称する人が説明していた。しかし、その説明には明らかな誤りが2つあり、雲の生成・発達のメカニズムをよく知らない人であることは明らかだった。私は地震雲の存在は否定しないが、科学的に納得のできる説明を未だに聞いたことが無い。
 そういえば、捏造された情報のテレビ番組での放送が問題になっている。マスコミにはもっともっと慎重になって欲しいものだ。

2007/01/17
 最近気象情報番組でとても気になる言葉がある。一つは「晴れ間」だ。国語的には「雨や雪などのやんでいる間」或いは「雲の切れ間」といった意味だ。気象庁の予報用語としては、ぐずついた期間中など、利用者にとって価値があると判断される場合などに限定して用いられることになっている。気象情報番組では後者の意味で用いられるべき用語だが、多くの場合「晴れ」の意味で使われてしまっている。予報用語としてはおろか、国語的にも使い方がおかしい。
 もう一つは「下り坂に向かう」だ。下り坂(のあるところ)に向かっている今は平地?。普通に考えて、いや、考えなくても感覚的におかしい。「回復に向かう」という表現の反対の言い回しとしてない交ぜになってしまったものか。
 原稿を書く気象情報会社の担当社員のスキルが低いのが最大の原因だろうが、言葉のプロであるべき放送局がチェックできないのも情けない。弊社に任せれば絶対大丈夫、などと言うつもりはないが、これらを他山の石として、プロならプロらしく基本的なところで間違いを犯さないよう、研鑽を怠らないように心がけたいと思う。

2006/12/22
漏斗雲  前回のこのコーナーで、竜巻は秋田にも(全国どこでも)起こると書いた。タイミング良く、知人から竜巻の写真を撮ったと聞き、画像ファイルをもらったので紹介したい。
 撮影日時は2006年11月13日16時30分過ぎ、場所は秋田県由利本荘市岩城内道川(道の駅岩城)とのことだ。
 この写真では、下部が地上(海面)に達しているかどうか判然としないので、あえて「漏斗雲」と呼称しておくが、これが地面(海面)にまで降りてくれば「竜巻」と呼ばれる。
 この撮影者からは、度々竜巻の話を聞く。海上のものが多いようだが、秋田でも竜巻は決して珍しくないことのひとつの証明になるだろう。

 (許可なくこの写真をダウンロードしたり、二次利用したりすることを、固くお断りします。)

2006/12/03
 佐呂間で竜巻が起きてから、竜巻について聞かれることが多くなった。竜巻は珍しいのか、秋田にも起こるのかなどだ。
 竜巻の発生数は決して少なくない。気象庁が日本での発生を確認しているだけでも年平均で10個は発生している。これは台風の日本への年平均上陸数よりはるかに多い。気象庁が確認していない竜巻もあるであろうことを考えるとその数は相当数になるだろう。ただし、台風と違うのは、影響範囲が狭く寿命が短いこと。ゆえに遭遇することは確率的に考えて非常に珍しいことかも知れない。
 秋田はもちろん、竜巻は日本全国で発生しうる。もっとも、発生しやすいところやしにくいところは当然あるだろう。
 佐呂間の竜巻が、日本で起きる竜巻としては非常に強かったため、異常気象か、とか、地球温暖化の影響か、といった質問も受ける。異常気象とは「25年以上に1回しか起こらない程度の現象」をいう。その意味では「異常気象」という言葉は少し安易に使われている気がするが、佐呂間の竜巻は「異常気象」と言っていいだろ。地球温暖化の影響かどうかは一概に言えないが、温暖化が進むと現象が激しくなる傾向があるので、地球温暖化の影響なのかも知れない。

2006/11/03
 たまには気象ネタを離れて。高校の必修科目の未履修が問題になっている。何の責任もない生徒が犠牲となってしまっており、便宜が図られるのは当然として、なぜこのようなことが起こったのだろう。
 問題の責任が、第一義的には現場(学校)にあることは否定できないだろうが、では現場がそこまで追い込まれた原因はどこにあるのだろう。全国的に起こっていることを考えれば、原因が各々の学校にあるなどとは到底言えない。私は、「ゆとり教育」の歪と考える。
 「ゆとり教育」の名のもとに科目の指導内容が削減され、授業時数も土曜の休日化や総合学習の導入で減らされ、学力の低下を招いた。しかし、社会の要請、例えば大学の新入生に求める学力や、地域社会が高校に求める進学率などは変わっていない。現場の学校がその要請に応えるために出来ることは限られている・・・。
 学校は進学予備校ではない。強化学習以外にも児童生徒に教えるべきことは沢山ある。教室掃除や部活動、学校行事等を通じての協調性や社会性など、もっと広く学校の機能に目を向けるべきだろう。「ゆとり」は教科指導の内容ではなく、児童生徒や教師の心の中にあるべきものと思う。心にゆとりがないからギスギスしていじめも陰湿化する。もう一度視点を変えて「ゆとり教育」を見直す必要があるのではないだろうか。

2006/10/13
 連休を中心に、海や山の遭難が相次いだ。いろいろな原因が複合して起きたのだろうが、その大きな部分を気象状況が占めていることは否定できまい。低気圧の急速な発達があったわけだが、台風がなくなったことで安心してしまい、判断を誤ったのだろうか。
 海、山のプロはそれなりに気象の知識もあり、気象情報には注意しているだろう。プロ意識もあるだろう。そのことが逆に過信に繋がり、詳細な気象情報の入手の怠りに繋がってはいないだろうか。
 災害は常識を外れた現象が発生するからこそ起こる。経験は大事だか、経験によると・・・、という判断は危険だろう。低気圧が急速に発達し、海、山が荒れることは予想されていた。もう少しデータによる判断が適切に行われていたなら、多くの遭難は防げたのではないかと思うと非常に残念だ。命に代えられる財産はない。多少の手間隙や金銭を惜しまないでいただきたいものだ。

2006/06/09
 昨日の各地に引き続き、今日関東甲信と東北北部が「梅雨入りしたとみられる」と発表され、北陸と東北北部を残すのみとなった。東北北部の平年の梅雨入りは6月12日なので、次に梅雨前線に影響された雨が降れば入梅となるだろう。
 今年の梅雨はどんな梅雨になるのか、気象庁の長期予報では明確な傾向は出ていないようだが、特に衛生面には気をつけて乗り切りたい。

2006/05/18
 13日に奄美地方が、14日に沖縄地方が「梅雨入りしたとみられる」と発表された。ちなみに、東北北部の平年の梅雨入りは6月12日である。
 秋田県は、ここのところ晴れの日が多い。テレビでも新聞でも「五月(さつき)晴れ」という言葉を見聞きする。「五月」以外に「○月晴れ」という言葉はないが、それは「五月」には特別な意味があるからだ。
 「五月晴れ」は「さつきばれ」と読むことからもわかるとおり昔からある言葉である。つまり「五月」は旧暦の五月を意味している。旧暦の五月は、年にもよるが概ね全国的に「五月雨(さみだれ)」すなわち梅雨の時期にあたる。つまり「五月晴れ」とは本来「梅雨晴れ」の意味なのだ。新暦の五月の晴れの意味で使うなとは言わないが、本来の意味を知ったうでて使って欲しい。本来の意味を忘れぬよう、雅やかな日本語が保たれるよう、マスコミには是非とも注釈付きで使って欲しいものだ。

2006/05/01
 今日から弊社の「マイタウン天気予報」の予報区分を変更した。新しい市町村界を優先したため、多少地形効果を犠牲にすることになってしまった。若干予報精度が落ちることになるかも知れないのは残念だが、ユーザーの使いやすさには代えられない。
 気象庁から「天気予報に関するアンケート調査結果」が発表された。WEB調査では、「今日・明日・明後日の天気予報」の重視度は90.2%だが満足度は64.6%とのことだ。差が大きい。弊社の予報の満足度はどのくらいなのだろうか。これからも精度向上に鋭意努めていきたい。

2006/04/18
 今朝の出勤時、弱い雨が降っていた。間欠で車のワイパーを動かすと茶色い水が掃かれてフロントガラスに縦の直線を描いた。相当量の細かい砂を含んだ雨だ。黄砂だろう。黄砂は春の足音のひとつだ。
 秋田県内では勢至公園でさくらが開花したようだが、気温のなかなか上がらない日が続いている。開花前線の足踏み状態が続くかも知れない。

2006/04/17
 今朝から「ひまわり6号」が異状をきたしている。気象衛星の観測資料は雲写真としてだけでなく、いろいろな形で予報の初期データとして取り込まれている。したがって、「ひまわり」の観測停止は予報精度の低下につながる。
 弊社を含め民間予報事業者も、大本の資料は気象庁からのデータである。したがって、気象庁発表の予報のみならず、全ての予報の精度が落ちることになる。一刻も早い復旧を望む。

2006/03/17
 いけないいけない、忙しさにかまけて、このコーナーを2ヶ月近くも放っておいてしまった。
 秋田市は3月に入って殆ど雪が消え、いよいよ春かなぁと思っていたら、12日から数日雪が降り、冬がもどってきた。車の屋根に積もった雪を払おうとしたら、融けかけた雪の下部(屋根に接している部分)が茶色い。その時は「しばらく洗車もしていないから、車の汚れかな」と思ったが。汚れにしては少し違和感があった。
 その後、とある筋からある情報を得た。黄砂だ。車の屋根に降り積もった黄砂を雪が含み(おそらく雪自体も多少黄砂を含んでいただろうが)、雪の下部が茶色かったのだ。見たときに「黄砂かも」とは思ったものの、自信がなかった。黄砂情報を調べればすぐわかったかも知れないのだが・・・。まあしかし、黄砂はいよいよ春が来た証拠でもある。
 春の嵐の気配も感じられる。厳しかった冬ももう終わりだろう。花の便りも聞こえてきた。

2006/01/20
 今日は大寒、暦の上では一年で最も寒い頃であるが、ここ数日、暦どおり寒い日が続いている。気温は低いのだが、幸いなことに、秋田での降雪量はさほど多くない。5日朝のドカ雪以降、道路の除排雪がままならない状態が続いていたが、降雪が少ないことが幸いし、ここ数日で大分排雪も進んできたようだ。私の通勤路も、一部を除いて殆ど排雪された。やれやれである。
 一方、身近なところでも、様々な被害が出ている。車の傷や、屋根の損傷、腰痛、etc.。亡くなっている方もいるようで、こんな被害は序の口かも知れないが。
 厳しい冬だというのに、一方では石油が高騰し、きな臭い話も聞こえてくる。困ったことだ。何とか無事に春を迎えたいものだ。

2006/01/05
 謹賀新年。本年もウェザープランニングをお引き立て賜りたく、謹んでお願い申し上げます。
 さて、今朝起きると、玄関前の車が雪に埋もれ、車体のしたの空間は周囲の積雪で完全に塞がっていた。秋田地方気象台の観測によると、2時に48cmだった積雪の深さは、3時54cm、4時61cm、5時66cm、6時71cmと、4時間で23cmも深くなった。吹きだまりでは倍以上の雪が積もったところもあるに違いない。
 これだけの降雪が短時間にあると、除雪が間に合わないのは止むを得ないことだろう。このような状態では、県や市町村の除雪を待っていてもいつになるかわからない。みんなで協力しあって自宅や会社の間口分だけでも除雪しようではないか。雪捨て場もないかも知れないが、近所で工夫し協力し合って、自分たちの生活は自分たちで守るしかない。雪がやわらかい今のうちに寄せておかないと、ますます大変なことになってしまうだろう。

2005/12/28
 山形県庄内町で、突風が原因と思われるいたましい列車脱線転覆事故が起きた。事故でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、怪我をなされた方々や関係の方々にお見舞いを申し上げたい。
 事故はちょうど寒冷前線が通過したと見られる時刻に起きた。寒冷前線付近では積乱雲が発達しやすく、事故当時も現場付近に発達した積乱雲があった模様だ。積乱雲の発達には強い上昇気流が必要だが、その発達過程で下降流も存在する。この下降流は冷気外出流と呼ばれ、地表面に沿って広がる。この流れの先端で突風が起こりやすく、特に強い下降流はダウンバーストとなって離着陸中の航空機に危険を及ぼしたりする。
 風速計では通常平均風速(10分間の風速の平均値)を観測するが、最大瞬間風速はもっと強く、統計的には平均風速の1.6倍程度といわれている。しかし強い突風では2倍を越えることもある。この比率を突風率というが、突風率の高い突風は発生確率が低いうえ、非常に局地的なものである。このため、風速計を相当密に設置しても全ての突風を捕らえることは難しいだろう。
 列車の減速や停止などの基準は平均風速によって定まっているようだが、その時々の気象状況が、突風率の高い突風が発生しやすい状況なのかそうでないのかということも考慮に入れた基準にしなければ、安全は確保できないように思われる。平均風速のみを基準としている以上、どんなに風速計を増やしてもあまり意味がないだろう。

2005/12/23
 一ヶ月前、寒さでオートバイのエンジンのかかりが悪くなったが、まだ何日かは乗れる日があると思っていた。ところがどうだろう、寒さはいっそう強まるばかりで二度と乗れる日はなかった。秋田でも12月としては記録的な雪となっているらしい。
 昨日、1〜3月の3か月予報が発表された。1月も平年より寒い確率が50%(平年並み30%、暖かい20%)、日本海側の降水量が平年より多い確率が40%(平年並み40%、少ない20%)とのことで、まだしばらく寒い日が続きそうだ。自治体向けの降雪量・路面状況の予報にも気を遣う。
 そういえば、我が家の前の狭い小路も通行が困難な状況になっているが、なかなか除雪に来てもらえない。手が回らないのだろう。雪国に住む者として、皆で協力して生活環境を確保していかなくてはならないだろう。除雪担当部署に文句を言うのは簡単だが、一番苦労しているのは業者を含めた担当の方々なのだから。

2005/11/22
 秋田地方気象台は、昨21日、秋田市で初霜と初氷が観測されたと発表した。それぞれ平年より15日、8日遅い。とはいえ、ここのところ暖かい日が続いているわけではなく、ここ1週間ほどは平年より気温の低い日が続いている。それまでは暖かめの日が続いていただけに、一気に季節が変わった感じだ。そろそろオートバイも冬ごもりさせようかと思っている。
 さて、24日に12〜2月の3か月予報が発表される。この冬がどんな冬になるか、注目したい。

2005/11/16
 秋田地方気象台は、昨15日、秋田市で初雪が観測されたと発表した。朝にみぞれが降ったらしい。平年より3日遅い。
 ところで、「みぞれ混じりの雨」といった表現をよく見聞きする。「みぞれ」とはそもそも雪と雨が混じった状態で降ってくる降水現象を表す。したがって「みぞれ混じりの雨」といった表現は誤りである。一般の方の誤用はともかく、マスメディア上で誤用が散見されるのは残念だ。

2005/11/09
 秋田地方気象台は、秋田市太平山の初冠雪を観測したと発表した。平年より9日遅い。ここのところ、帯状の高気圧に覆われ、晴れる日が続くことが多かったが、やっと本格的な寒気が南下してきた感じだ。あまりに寒気が強すぎて、暴風警報が発表され、県内にも被害があったようだ。
 今年の冬はどんな冬になるのだろうか。仙台寒気気象台発表の3か月予報によれば、今冬の気温は、12月は平年並み40%、1月は平年並みと平年より高いが40%となっている。まあ平年並みと見ていいということになろうか。私の予感では・・・、そんな無責任なことを気象予報士が書いちゃいけないな。

2005/10/31
 ロシア極東で森林火災が広がっている。秋田県内でも「溜めた雨水が黒かった」という話も聞こえてきた。相当量の煙が空中に拡散していることだろう。
 火山噴火のときもそうだが、大量のエーロゾル(微粒子)が空中に増えると、気象にも少なからぬ影響を与える。煙霧など視程悪化現象の増加、日射の遮蔽による気温の低下、凝結核(雲粒や雨粒の元となる微粒子)の増加に伴う雲や雨の生成量の変化、エーロゾルの性質によっては酸性雨発生の原因となる恐れもある。気象に限らず、他にもいろいろな影響があることだろう。一日も早い鎮火を願いたい。

2005/10/25
 このコーナーの更新をサボっているうちに、初雪や初冠雪の話題が聞こえてきた。そういえば、最近長続きはしないものの冬型といっていい気圧配置が時折現れるようになってきた。朝晩の冷え込みも強く、秋も深まってきている感がある。
 秋田県内では紅葉の見ごろのところも多いようだ。残り少ない秋を満喫したい。

2005/09/08
 台風14号が大きな爪痕を残して走り去った。災害に遭われた方々に、お見舞いを申し上げます。
 記録を塗り替えるような降水量を記録するなど、これまでの経験に基づく常識が通用しない気象現象や災害に見舞われた。今回の台風に限らず、気象現象が何かおかしい。気象現象が特異だったのではなく、気候そのものが変わってきているような気がする。防災対策も、今までの常識の範囲では足りないことになるのではないだろうか。

2005/09/05
 台風14号が九州に迫っている。台風から流れ込む暖湿気流の影響で、昨夜東京で1時間に100mmを越える猛烈な雨が降り、床上浸水などの被害が出た。アメリカでもハリケーンカトリーナが大暴れし、ニューオリンズの8割が冠水し、復旧の見通しも立たない状況となっている。
 自然の猛威には驚かされるが、これらの災害を起こした気象現象の原因を「地球温暖化」に求める声がある。何でもかんでも「地球温暖化」のせいにするのは多少危険があると思うが、かくいう私もその可能性が高いと思っている。ここのところ、秋田県内でも局地的な激しい雨が降ることが多くなっているが、気象庁気象研究所の調査によると、日本では過去100年間で大雨の日と雨の降らない日が増え、雨の降り方が二極分化する傾向にあるとのことだ。熱帯と温帯の雨の一般的な降り方を比較すれば、この原因を地球温暖化に求める考え方はある程度納得がいく。その結果としての現象が今回の災害に現れたとする考えも、あながち間違いとは言えまい。

2005/08/27
 台風11号は関東に上陸したのち、東の海上に去って行った。この台風の特徴のひとつは速度が遅かったことだ。通常、台風はその移動の向きに東向き成分が入る(転向する)と速度を上げるのだが、今回は日本付近の偏西風が弱く、そうならなかった。こういった台風は、同じところに長時間影響を与えるため被害が大きくなりやすく、また、進路の予想が難しい。移動方向やスピードを上げ始めるタイミングなど、確定が難しい要素が増えるためだ。気象関係者泣かせである。

2005/08/02
 海岸で落雷による犠牲者が出た。一度に大人数だったため、マスコミでも様々に取り上げられているが、同様の事故は珍しいことではない。
 海上や浜辺は、平らで高い突起物がないため、市街地などより格段に人間に落雷しやすい。人間の体は大変電気を通しやすく、雷の格好の標的である。日射で発達するような孤立した積乱雲の寿命は数10分〜1時間程度と言われており、見方を変えると短時間で急に発生、発達、衰弱することになる。従って、一天にわかに掻き曇り、急に雨が降りだし、風が突然強まったり回りだしたり、など、積乱雲接近の兆しが現れたら、すぐに発雷の可能性を考えて退避行動をとるべきだ。今回の事故では、ライフガードが避難誘導を始めていたらしいが、間に合わなかったのは大変に残念だ。

2005/07/25
 台風7号が接近してきている。今日梅雨明けが発表されないとなると、台風一過の晴れた日に東北北部の梅雨明けが発表されることになりそうだ。となると、ほぼ平年並みか。
 ここのところ、世界中で随分と物騒な出来事が多い。こちらは台風一過の晴天、とはいかないだろうか。悲しいことだ。

2005/07/20
 忙しさにかまけて、このコーナーをサボっているうちに1か月近くが過ぎ、東北と北陸を除いて梅雨明けが発表された。今日明日は土崎港曳山まつりだが、弱まった梅雨前線ともいえる弱い気圧の谷の影響で、すっきりしない空模様だ。こういうときは予報が難しい。半日前と最新の気象庁の数値予報資料を比較してもかなりの変化がある。このため、ここのところ、予報も次々と修正を余儀なくされている。
 この気圧の谷の影響がなくなり、スキッと晴れれば東北北部も梅雨明けが発表されるかもしれない。東北北部は遅い梅雨入りに早い梅雨明けとなる可能性が大だ。

2005/06/24
 東北北部の平年の梅雨入りは12日だが、10日以上過ぎた今日になっても未だ梅雨入りしていない。なかなか梅雨前線が北上してこないのだ。梅雨入りせず、梅雨前線が影響してこないため秋田県では雨が少なく、今月の降水量は現時点で平年比50%を切っている。それだけでなく、秋田市では今月中に真夏日を既に2日も記録しており、何でも78年ぶりらしい。
 バイク通勤の私としては、雨が降らないのは有り難いのだが、農作物の管理は大変だろう。何事も極端に過ぎず、天候は平年並みがよい。さて、東北北部の梅雨入りはいつになるのだろう。太平洋高気圧さん、頑張って。

2005/06/17
 15日に東北南部が梅雨入りしたとみられる、という発表があった。東北北部の平年の梅雨入りは12日だがいつになるやら。
 この季節は予報士泣かせだ。前線の僅かな位置のズレで天気は全く違ったものになったりする。ここのところ、予報の根拠となる気象庁の数値予報資料も変化が大きく、半日前の予報値と新しい予報値が大幅に違っていたりする。だから予報の修正が難しい。こういう状況では、週間予報もあまり当てにならない。さて、東北北部の梅雨入りは・・・。

2005/06/09
 昨日、タイバンコクで、サッカー日本代表が北朝鮮を2-0で下し、ワールドカップ本選出場を決めた。おめでとう。サッカー好きの私も楽しみが増えた。本選での活躍も期待したい
 バンコクでの試合はスコールも危惧されていたが、雨に降られることはなかったようだ。スコールは短時間の激しい雨を伴うことが多いが、熱帯で起きやすい。それは暖かい空気が、より沢山の水蒸気を含むことができるからだ。この性質からも地球温暖化はやはり気になる。
 日本はといえば、いよいよ梅雨の季節だ。九州南部は10日以上も梅雨入りが遅れているようだが、台風4号が梅雨前線を引き連れて北上しているため、明日にも西日本全域、東日本の大部分、場合によっては東北南部まで一気に梅雨入りが発表される可能性もあるだろう。ちなみに、平年の梅雨入りは、東北北部が6/12、東北南部は6/10、九州北部は6/5である。なお、気象庁は梅雨入りを発表してはいるが宣言はしていない。

2005/05/25
 15日の日本気象学会で、2081年〜2100年の気温や降水量などの予測が発表された。研究によると、世界全体の陸地の平均気温は3.7℃も上昇するらしい。この気温差は大変な数字だ。秋田など、北国では雪が減っていいことだ、などと悠長なことは言っていられない。
 秋田市の場合、夏の最も暑い時期は8月上旬だが、平均気温が3.7℃上がれば、単純計算ではそれ以上の気温の日が7月上旬から9月上旬まで続くことになる。2003年の米は不作で作況指数は全国平均が90、秋田県が92、青森県は53だった。不作の原因は日照不足などにもあり、気温だけで論じるわけにはいかないが、青森市の同年の6〜9月の平均気温は平年差-1.3℃である。平均気温が2℃以上変わるというのは実に大変なことなのだ。
 気温が変われば地表の雪氷分布も変わり、降水域や降水量も変わる。日照時間も変わる。つまり気候そのものが広い範囲で変わってしまうのだ。絶滅する生物も出るだろうし、農作物は大打撃。洪水が増え、熱帯地方にしかなかった伝染病がより広範囲に広がり・・・。人類は、産業活動を中心に、生き方を考え直さなければならない時期に来ているように思う。

2005/05/17
 15日、由利本荘市、八塩いこいの森で開催中の「黄桜まつり」会場でテントが突風で飛ばされる事故があった。けが人が出たようだが、怪我で済んだのは不幸中の幸いである。
 運動会会場のテントが風で飛ばされる映像を見たことがある。風の力を甘く見てはいけない。特にテントはその形状から、下から上に煽られやすく、しかも風を受ける面積に比して軽いため、案外簡単に飛ばされる。私自身キャンプが好きで、種類や大きさこそ違うがテントやタープを張ることが多い。外に立って直接風に当たっている分には心地よい風でも、広い面積をもったテントにとっては大変な風圧がかかることを体験している。アルミではあるがかなり太い支柱がグニャリと曲げられたこともある。
 天気予報は、天気を知るだけでなく、こういった事故が起きないよう対策に役立てるなど、目的を持って利用することで真価を発揮する。テントを飛ばされたことがない人にとっては、風が危険をはらんでいることに気が付かないかもしれない。しかし、気象を仕事にしている者にとっては、こういった気象に関係する災害や事故はいつも関心事である。こういった影響を予報と一緒に伝えることが、予報に解説を付けるときの私のポリシーである。もっとも、ホームページに掲載するような不特定多数が利用する予報ではこれは不可能。だからこそオーダーメードの天気予報、ユーザーの個別の利用目的を意識した予報解説が有意義なのだ。

2005/05/01
 世界自然保護基金が、世界の主要電力会社の地球温暖化対策への取り組みを点数化したそうだ。日本の会社は概して低い評価だったようだ。が相次いだ。
 近年、地球温暖化対策の観点で、発電方法がいろいろ研究されている。地球温暖化の大きな原因が大気中の二酸化炭素濃度の増加と考えられているため、燃料の工夫など、二酸化炭素の排出量削減という視点が中心となっているようだが、別の視点を提案したい。それはエネルギーのサイクルの期間を考えることだ。
 火力発電に使う化石燃料は、太古の植物が光合成によって個体に取り込んだ太陽エネルギーを現代になって利用していることになる。原子力発電に至っては、エネルギーの源を地球誕生まで遡って考えなければならない。この点、太陽電池による発電や風力発電は、太陽から受けたエネルギーを即座に電力に転換していることになる。水力も比較的短時間だ。
 こうしてみると、地球が太陽から受けたエネルギーが電気エネルギーに変換されるまでの時間が短ければ短いほど、水力発電など多少の例外を除き環境にやさしいことがわかる。これはある意味当然で、太古の太陽エネルギーを再度熱として放出したら、現在太陽から受けている熱エネルギーにプラスされる分だけ大気中の熱エネルギーの総量が増えるのは自明の理だ。この、エネルギーのサイクル時間という視点、いかがだろうか。

2005/04/20
 今日は気象台発表による秋田市のさくらの開花予想日だ。しかし、あいにくの空模様で今日明日の開花は難しそうだ。開花が待ち遠しい。
 さくらは夏頃に花芽(かが)を形成して休眠に入る。冬になって一定期間低温にさらされると目を覚ます。これを休眠打破という。極端な暖冬だと休眠打破できずに、開花の時期が大幅に狂うこともある。休眠打破後、花芽は気温が上がるにつれて成長し開花に至る。気象庁では、秋からの気温経過と長期予報による気温予想を加味して開花日を予想し発表している。
 ところで、この時期いつも気になる言葉がある。それは「開花宣言」という言葉だ。マスコミが強調のために?勝手に使い始めた言葉と思われるが、気象台は決して「宣言」はしていない。発表しているだけだ。これをご覧の多くの人は意外に思われることだろう。気象庁では「生物季節観測」といって、いくつかの花の開花日、鳥の初鳴き日、虫の初見日などを観測している。特にさくらの開花は市民の関心が高いため、マスコミでも取材し、大きく取り上げられる。
 発表を宣言と言い換えても実害はないだろう。が、多くの人が「気象台は開花を<宣言>している」と思い込んでいる事実をマスコミ関係各位には重く受け止めてもらいたい。安易な報道が国民的な大きな誤解を招いてしまう。それぼど自分たちが大きな力を持っているということを。今日も某新聞に「開花宣言」という表現をみつけた。残念に思う。文字や言葉を道具にするジャーナリストには、正しい言葉、美しい言葉を用いるよう心がけて欲しいものだ。もっとも、書いた本人も気象庁が「開花宣言」をしていると思い込んでいる可能性が高いが・・・。

2005/04/09
 日本時間の今朝、南米から中南米、太平洋にかけて金環皆既日食が見られた。月と太陽の見かけの大きさはほぼ等しいが、月や地球の公転軌道は完全な円ではなく楕円であるため、その大きさは微妙に変わる。月が太陽と地球の間に入って太陽を隠すのが日食だが、月の見かけの大きさが太陽の見かけの大きさより大きければ皆既日食、小さければ金環日食となる。今回は、場所によってどちらも見られた。
 見かけの大きさがほぼ同じであるという偶然のため、我々地球上の人間は様々な天体ショーが見られるわけだが、もし月がなかったらどうなるだろうか。夜は毎日暗く、日食が見られないのは当然として、気候にも影響があるといわれている。
 月がなくなれば地球の自転速度が上がり、一日が短くなる。すると1日の熱収支が変わって気候が変わるというわけだ。このように、自然は人間が思いもよらないような様々な相互作用やバランスの上に成り立っている。しかもこのバランスは、多少の崩れなら吸収して保つ働きを持っていることが多い。その代わり、一定の限度を越えた時、一気に変化が進む。これくらいは大丈夫、その積み重ねがある日突然環境破壊を生むこともある。
 日食を見るたび、自然の不思議や偉大さを感じるが、このバランスをいかに保ちつつ産業の発展を図るか。「環境の時代」という言葉も聞かれる現代、大き課題のひとつだろう。

2005/03/31
 乳頭山で遭難した43名が無事帰還した。凍傷を負った方もいらしたそうだが、全員無事に下山できたことは不幸中の幸いであった。
 天候が悪化したとき、地図もコンパスも使わず道を誤ったとのことだが、そもそも、沿岸部だけとはいえ「暴風雪警報」が発表されるような天候の時に何故入山したのだろう。山のベテランは気象のチェックを欠かさないと思うが、あまりに甘い判断で信じがたい。「朝秋田市で青空が見えた」とのことだったが、当日は冬型の気圧配置である。冬型といえば筋状の雲。筋から外れれば青空も出るが、筋に入れば吹雪くこともある。秋口の「時雨模様」を思い出してもらえばわかりやすいが、天気が短時間で変わりやすいのが日本海側の冬型の特徴である。もう少し気象の知識があれば、青空が見えたことだけで山に入れるとは判断しなかったはずだ。残念である。
 当日午前5時、気象台発表の秋田県内陸部の天気予報は「西の風 後 やや強く、くもり 昼過ぎから雪でふぶく」であった。下り坂であることも読み取れるし、はっきり「ふぶく」とも表現されている。ましてや山の天気である。メンバーから不安の声も上がっていたようだが、素人目にも疑問符のつく判断だ。
 今回は人命が失われることはなかったが、津波や台風時に防波堤に出て波にさらわれたりなど気象と関わる事故などを見るたびに、もっと正しい気象の知識があれば防げたのに、と思うことがしばしばある。今回にしても、冬型なら多少地形の影響はあっても、概ね西〜北西の風が吹き続くということを知ってさえいれば、方角を見失うこともなかったと思われるのだ。気象予報士の資格が取れるほどの専門的な知識はいらない。ほんの少しの、あと少しの知識で十分に防げる事故が多いように思う。残念ながら、現在学校教育で教えられる知識では不十分であるし、内容的にも必ずしも防災に役立つとは言い切れない。船舶免許を取るために必要な気象の知識もあまりに薄っぺらな内容だ。行政にはもう少し自然や防災に関する教育内容や、制度を考えて欲しいし、海や山と関わりのある人にはもう少し積極的に気象に関して学んで欲しいとも思う。私もお役に立てるものならお手伝いしたいと思う。地元の事故だけに、思わず長くなってしまった。

2005/03/26
 報道によると、八郎湖岸に「ジャ山」が出現したとのことだ。「ジャ山」とは、結氷した湖面が春先の暖かさで緩んで割れた氷が、強風で岸まで押し流され、山のように積み重なって盛り上がる現象のことらしい。恥ずかしながら、ニュースで報道されるまで「ジャ山」という言葉を知らなかった。
 「ジャ山」は、厚さ20cmほどの氷が1〜4mもの高さに積み重なり、20mにわたって湖岸を覆ったとのことだ。何という力だろうか。これだけの高さに氷を積み重ねるのは、重機を使っても容易ではないだろう。それを風の強さだけでやってのけるのだから、自然というのは恐ろしい。自然を甘く見ていると大変なしっぺ返しを喰らうに違いない。
 私たちは、もう少し積極的に自然との折り合い方を考えなくてはならないのではないだろうか。

2005/03/18
 2か月ほどこのコーナーを休んでしまいましたが、復活します。
 さくらの開花予想も発表され、空模様もいよいよ春らしくなってきた。とは言っても、今夜は強い寒気が入り、雪が降りそうなのだが。(長続きはしない見込み。)
 気象庁の「さくらの開花予想」は水曜日に発表されるが、16日発表のものは、9日発表のものに比べて大幅に修正された。これは今後の気温予想が暖かい方に修正されたためで、北陸地方は5日程度も開花予想日が早まった。ちなみに、東北地方はほぼ平年並みの予想で、秋田市は4月18日と予想されている。
 実は某雑誌の取材が3月7日にあり、その時点で私は秋田市の開花予想日を18日より一週間程度遅い予想をしたのだが、印刷の関係で修正がきかない。大外しするとトホホであるが、この修正も含めて、秋田県内の各所の開花予想を近日中にここに発表したいと準備中である。

2005/01/17
 阪神淡路大震災から10年目を迎えた。NHKでは終日防災を考えさせる特番を放送している。地域によっては防災意識の高いところもあるようだが、誤った知識や判断で行動を決めている個人や自治体もあるようだ。個人はある程度仕方ないとしても、自治体がこれでは困る。
 具体的にはこういう例だった。地震が起きて気象庁から津波警報が発表された。地域防災計画によれば即避難勧告か避難指示を出すことに決まっていたが、職員が海を見に行き、津波を確認できなかったから勧告等をしなかったというのだ。職員が確認してからでは勧告や指示が間に合わない可能性が非常に高いということに考えが至らないのだろうか。そして何のための計画なのだろうか。
 個人の例だが、揺れが小さかったから大丈夫と思った、津波の高さが1mなら大丈夫だと思った、というのがあった。スマトラ沖地震による津波を見てもわかるとおり、津波は震源付近で起こって伝播してくるものであり、その場所の揺れの大きさとは関係ない。津波の高さは浅瀬に来ると高まるし、海岸線の形によっても高まるところがある。そもそも1m程度でもかなりの破壊力がある。たまたま津波警報どおりの津波が来なかったため事なきを得たが、これでは気象庁が何のために一秒を争って津波警報を発表しているのかわからない。

2005/01/11
 秋田市、河辺町、雄和町が合併した。これにより行政上の様々なことが効率的になるだろう。いや、そうなってくれなければ合併の意味がない。
 市町村合併は、横の一体化であるが、縦の一体化の動きも出ているようだ。国、県、秋田市が同じ時間帯に同じ地域を除雪する「タイミング除雪」が今日から試験的に一部地域で始まるそうだ。利用者にとっては国道も県道も市道も一本の通勤路でしかないが、道路管理者の違いで除雪の基準やタイミング、方法なども異なっており、危険や不満が発生している。これが「タイミング除雪」でどのように改善されるか楽しみである。
 弊社も自治体向けに降雪量と路面状態の予測を合わせた天気予報を提供しているが、行政の縦横の繋がり、地域住民と行政の連携、加えて除雪委託業者や関連業者等が一体化することにより、より効果的で低コストな除雪が行われることを期待したい。

2004/12/31
 スマトラ沖地震による津波の災害が大変な規模となっている。環太平洋と違って、津波の観測、通報網が整備されていないことも災害を大きくしたとのことだが、こういった災害では、個人の咄嗟の判断が運命を別けるように思う。多少地震や津波の知識があれば、引き波(引き波も津波である)に気づいたときに、即座に避難すべきであると考えることができる。防災インフラも必要だが、結局は個人の防災知識が大きく物を言うだろう。
 この一年、日本国内は災害が多かった。もう一度自分の防災知識を確認してはいかがだろうか。国や自治体には防災知識普及に力を注いでもらいたい。気象も大きな災害をもたらす。防災と言わず、日々の気象情報の理解にも正しい知識は必要だ。当サイトの予報用語のページなどが参考になれば幸いだ。

2004/12/25
 クリスマスがやってきた。世間ではイブが花金、クリスマスは土曜日ということで、例年以上に楽しんでいる人も多いだろう。仕事している自分が悲しい。
 ところで、ホワイトクリスマスという言葉がある。今年の秋田市はなかなか雪が降らず、ホワイトクリスマスにはならないこも知れないと思っていたら、今シーズン初めて冬型の気圧配置が長続きして雪化粧となった。ちなみに、過去30年を調べてみると、気象台の積雪量のデータからホワイトクリスマスであったと推定される年は14回。ほぼ半分だ。だか、これを10年ずつに分けると7回、3回、4回となっており、結構偏っている。これは何故だろうか・・・。

2004/12/21
 今日は二十四節気の冬至。一年で最も昼の短い日である。これに合わせるかのように、やっと冬らしい空模様となっている。今まで雪がなくて過ごしやすかったが、やっと本来の姿に戻った感がある。
 ところで、仙台管区気象台から「2004年の東北地方の天候(速報)」が発表された。やはり今年は本来の姿とは言いがたい気象状況の一年だったようだ。平均気温は統計開始後、1990年に次ぐ記録的な高温となる見込みとのこと。5月の記録的多雨、史上最高の台風上陸数。いったい地球に何が起こっているのか。最近発表された、ある研究成果によると、平均気温の上昇には明らかに人間の活動に起因する部分があるとか。さて、今我々は何をすべきなおだろうか。

2004/12/09
 今朝、秋田市で初霜と初氷が観測された。初霜は平年より33日、初氷は26日も遅い。スキー場にも雪がなく、事実上の開業は相当に遅れることだろう。
 秋田の状況だけで地球規模の気候を語るのには無理があるが、やはり地球温暖化により気候が変動しつつある、と考えたくなる。その真偽はともかく、普通でないことが多かった今年の気象現象を振り返って、今一度地球温暖化について考えてみるいい機会ではないだろうか。

2004/11/22
 今日、11月22日は、二十四節気(にじゅうしせっき)の小雪(しょうせつ)である。寒くなり始めでまだ雪も少ない、という意味である。確かに朝夕の冷え込みは厳しくなってきているが、秋田市では初霜、初雪、初氷のいずれもまだ観測されていない。平年日は10日も過ぎているのだが。11月に入ってほとんどの日が平年より暖かい。長期予報でも暖冬気味の予報となっているが、今月中に初雪は観測されるだろうか。
 雪は降らなくてもいい、と言う人は多い。確かに雪が多いと暮らしにくい。しかしながら雪が降らないと困る人も少なくない。私は、平年並みに降ってくれるのが一番いいと思っているのだが皆さんはどう思われるだろうか。

2004/11/16
 たびたび冬型の気圧配置が現れるようになってきた。季節は一歩一歩本格的な冬に近づいてきている。世の中を見渡しても、天災、戦禍、拉致問題の停滞、領海侵犯など、暗い話題が多すぎる。
 しかし、冬にも中休みがあるように、紀宮さま婚約内定の明るいニュースが飛び込んできた。明けない夜はない。春の来ない冬もない。冬は冬でそれなりの役割を担っている。冬の雪が少なければ、春先に農業用水が不足する地域もあるだろう。冬とて悪いことばかりではない。何事もいいところを探し、明るく生きていきたいものだ。

2004/11/12
 暦の上では11/7(立冬)から冬に入っているが、昨日、一昨日と、最高気温が8月下旬から9月上旬並という暖かい日が続いた。しかし、今夜は一転、強い寒気が入ってきそうである。一晩で崩れるものの冬型の気圧配置となり、秋田県内も標高の高いところでは雪が降る可能性がある。気温の変化が大きいので、体調管理には十分注意していただきたい。
 気象庁の季節予報によれば、東北地方はやや暖冬気味の予想だがどうなるだろう。いよいよ冬将軍の足音が聞こえ始めている。中越地震の被災者の皆さんが心配だ。

2004/11/09
 昨日発表の今日の秋田県地方の天気予報は、気象台も弊社も大外しだった。「晴れ・降水確率0〜20%」が「雷雨」では目も当てられない。内部の話をすれば、どの予報資料にもここまで崩れるデータはなかった。その意味ではどうしようもない「外れ」なのだが、利用者の皆様にとっては全く関係のない話で、ただただお詫びするしかない。
 ここまで大きく天気予報が外れることは滅多にないが、年に数回はある。実をいうと、将来、いかに予報技術が発達しようとも、観測網の荒さや気象現象そのものが持つカオス(混沌)の性質などの問題により、必ず当たる予報手法は存在し得ない。上手な天気予報の利用は、その外れ方を意識することだ。外れた場合はこうなる、という予報の次点の候補が頭にあると、大方の外れ方には対処できる。もっとも、そのためにはある程度の知識が必要なのだが・・・。これからも、次点の予報が意識できるような概況解説を心がけようと思う。

2004/11/05
 八幡平アスピーテライン、樹海ラインが冬期閉鎖となった。開通は来年の連休前というから、実に半年近くもの長期閉鎖となる。いかに雪深い地域かと思い知らされる。路線沿線に人が出入りしなければならないところがなければ除雪の必要もないだろうが、都市部や幹線道路はそうはいかない。行政で除雪をしてもらえることがいかにありがたいことか。しかし、我々住民も行政に任せきりではいけないだろう。自分の玄関先くらいは自分で始末すべきだ。受益者は自分の家族だけなのだから。
 天気予報も活躍できる。除雪、排雪、凍結防止剤にかかる費用も馬鹿にならない。税金の無駄遣いを避けるためにも、効果的な除雪作業が求められる。天気予報も十分に活用していただきたいものだ。

2004/11/01
 野菜が高騰している。台風など、度重なる災害の影響という。農家の方々が丹精して育てる作物も、一度の台風で駄目になったりする。そういった食べ物が、我々の口に入るということがいかに幸せなことか。新潟県中越地震の被災地では食べ物にも困っているが、食べ物のありがたさをひしひしと感じる。
 そんな中、毎年のことであるが、某スポーツの優勝祝賀会でビールかけが行われた。あれはいつから始まったのだろう。私は食べ物を粗末にすることが嫌いだ。食べきれずに残されたものが捨てられるのも嫌いだ。そんな私には、あのビールかけが理解できない。ニュースなどで見るたびにがっかりし、残念に思う。関係者の方々は、子供たちに夢を与えると公言する一方、食べ物は粗末にしていいと行動で示しているといえる。
 あれだけのビールを作り、運ぶまでにどれだけのエネルギーが消費されているだろう。人間の労力はもちろん、輸送や工場稼動にも燃料や電気を使っている。こういった無駄も、地球温暖化に手を貸しているという視点も持ってほしい。金を払っているのだから文句を言われる筋合いはない、という考えもあるだろうが、私には自己中心のわがままにしか見えない。

2004/10/27
 今季一番の寒気が入ってきている。予報や概況説明に、「冬型の気圧配置」や「雪」といった冬向きの表現が必要になってきた。寒気の山場は今日にも越えるが、きちんとした備えのない中、外で寒さを凌ぐのは大変なことだ。地震や台風の被災者の方々に、何も手を差し出せない自分がもどかしい。
 イラクから不穏なニュースも聞こえてきた。日本全国満身創痍、弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂といったところか。

2004/10/25
 新潟県中越地震の余震がなかなか収まらない。地震は気象予報士の守備範囲ではないが、気象庁時代に地震計の検測をするなど多少のかかわりがあったこと、また、5年ほど新潟に住んでいたたことがあり、在住の友人知人も多く、大変気になっている。
 地震は予知が非常に難しいため、台風以上にたちが悪い。前回の独り言で防災教育のことについて触れたが、益々その必要性を強く感じた。
 建物は余震による崩壊等の危険もあるため、屋外に非難している人も多いようだ。雨露や寒さを凌ぐのは大変だろう。屋外では天気予報を入手したくてもラジオくらいしか手段が思いつかない。携帯電話も電池が切れればそれまでだ。インターネットなどいかに通信網が発達しようとも、有線では災害に対して脆弱だ。電波を使っても、中継基地や受信装置の電源が切れればそれまでだ。台風、大地震と災害が続き、防災体制の問題点が表面に表れている今こそ、体制の見直しの良い機会ではないだろうか。
 良い、などといっては被災された方々に申し訳ない。末筆ながら、災害に遭われた方にお見舞い申し上げ、一刻も早く平常の生活が取り戻せるよう祈ってやまない。

2004/10/21
 昨20日は「(秋の)土用の入」であった。最近では「土用」と言えば夏の土用を指すことが多いが、本来は年4回ある。土用波とは夏の土用(立秋の前の18日間)の頃、遠方の台風などが起こす波のうねりが太平洋岸に伝わってくることをいうが、季節がひとつずれた秋の土用に台風が直接襲来した。季節外れと言って差し支えないだろう。更には今年最大級というおまけまでつき、大変な災害を日本にもたらした。災害に遭われた方にお見舞い申し上げたい。
 自然の力は偉大であり、脅威である。どんなに天気予報の技術が高まって、台風のコースや降水量が寸分の狂いなく予報できたとしても、台風が引き起こす災害までは食い止めることはできないだろう。だからこそ、個人個人が防災の知識を身につけることが必要だろう。こういった重要なことこそ、もう少し教育現場で教えられてもいいのではないだろうか。年一回の避難訓練だけでは十分な防災知識は得られようはずがない。
 天災だけでなく、目を覆いたくなるような残酷な事件も増えている気がする。「ゆとり」の教育ではなく、「心豊か」な教育、学問としての教育でなく、世の中に出て役に立つ教育。教育行政は、金の出所よりももっと中身を考えて欲しいものだ。

2004/10/18
 急に朝の冷え込みが厳しくなってきた。秋雨前線が停滞しなくなり、移動性高気圧に覆われることが多いこの季節、夜晴れると、放射冷却で朝は冷え込む。霜注意報も発表されるようになった。農作物の管理には注意が必要だ。
 放射冷却とは、地表や下層大気から、熱が赤外線放射という形で宇宙空間へ逃げていく現象だ。水蒸気や二酸化炭素は、この赤外線放射を吸収して熱が宇宙空間に逃げるのを抑える。これを温室効果という。もし、温室効果がなければ、地球全体の平均気温は33℃も下がるという。温室効果ガスは、こうして生物が住みやすい環境を作りだしており、決して悪者ではない。しかし、過ぎたるは何とか。温室効果も度が過ぎると地球温暖化を引き起こしてしまう。
 我々人間は、もう少し自然の微妙なバランスに気を配らなければならないのではないだろうか。人間も自然の中に生かされている。人間のためだけ、産業や経済効果ばかりに目を向けていては、自然のしっぺ返しを食らうことになるだろう。

2004/10/12
 全国各地でクマが人里に現れている。冬眠の季節を目の前にして食いだめしておかなければいけない時期である。例年なら、山にもどんぐりやら何やら秋の実りがあって、クマも人里に下りてくる必要はないのだろうが、今年は相次ぐ台風の影響なのか山にえさが乏しいらしい。台風が来襲すると、風や雨で人間が直接受ける影響にばかり目がいっているが、その影響はもっと広範囲に及んでいる。年に数回の台風でさえそうなのだから、地球規模の気候変動が恒常的に続いたら、その影響の大きさは台風の比ではないだろう。今一度、地球温暖化の影響(おそらく、気が付いていない影響がまだまだある)を見直し、対策を考えねばならないのではないだろうか。
 もしかすると、台風の増加も今年だけの現象ではなく、気候変動の表れかも知れない。

2004/10/08
 今日10月8日は、二十四節気の寒露、露が寒気で凍る手前という意味の日である。しかし、今朝の最低気温はとても露が凍るような気温ではない。それどころか熱帯の熱い空気を運ぶ台風が、秋田に明日明後日にもやってきそうである。本当に今年は台風に泣かされる。予報コースも微妙で、また少なからぬ被害が出るかも知れない。これから発表される台風情報には十分注意していただきたい。そして対策は多少無駄になってもいいという覚悟で早めにしたいものだ。

2004/10/06
 衣替えの季節だ。四季のはっきりしている日本では理に適った風習といえる。秋田の場合、この季節は平均気温の下がり方が一年で最も急激であり、タイミングもいい。しかし不思議に思うこともある。南北に長い日本列島、北と南では気温が大きく異なる。それでもほぼ全国一斉に衣替えとなるのは何故だろう。横一線は無難で、学校や企業では有力な選択肢だろう。しかし、個人の衣服となると、やはりその日その日の天気に合わせて選ぶべきだろう。平均気温がどんどん下がるといっても、日々の気温は上がったり下がったり。気温だけでなく風の強さや湿度の違いによっても体感温度は異なる。特に衣服には気をつけたい季節だ。

2004/10/04
 富士山測候所が無人化された。気象衛星も気象レーダーもなかった設置当時、富士山測候所の存在意義は非常に大きなものがあった。しかし、その環境は人にとっても観測機器にとっても劣悪で、危険も多かった。事実、滑落などで4人が殉職している。私は気象台勤務時代に、一度は行って(勤務して)みたいと思っていたところが二箇所ある。南極と富士山測候所だ。気象台辞めてからも、富士山には測候所が有人であるうちに一度は行ってみたかった。
 それはさておき、衛星やレーダーが配備され、ウインドプロファイラーといった新しい観測技術が発達するにつれ、富士山測候所に人を配置する(目視観測を行う)価値が薄れてきたのは間違いない。危険を伴うし、税金の有効な使い道という視点で考えれば無人化は当を得た選択なのだろう。しかし、気象の世界で人間の活躍の場が機械に奪われていくのは寂しい気がする。今や予報もコンピューター頼みで、気象台の予報官は腕の見せどころがなくなってきているという。今こそ、我々民間企業の気象予報士が、機械頼みではない力を発揮しなければならない時かも知れない。

2004/10/01
 台風21号の爪痕が全国に広がっている。気象の仕事をしていると、何とか防げなかったものかと思える被害もある。土砂災害や洪水などは非難するしか手が無い。しかし、屋根や窓の補強などは多少の無駄を覚悟で前もってできなかったものかと、補強作業をしようとして遭遇した事故のニュースを聞くたびに思うのだ。自分のところだけは大丈夫、防災では決してしてはいけない考え方だ。

2004/09/28
 今日は中秋の名月。団子を食べる人も多いだろうか。秋田では天気も良さそう。今夜は月見に一杯といこうか。しかし、稲の豊作を祈る祭りを行ったことが始まりとされているお月見も、台風による塩害で散々な農家にとってはあまり気の休まる行事ではないかも知れない。台風21号が近づいて来ている。コースが予報どおりなら、今回は秋田県での塩害はあまり心配なさそうだが雨風はいかに。29日以降、台風情報には十分気をつけたいものだ。

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